コラム - 第12話


第12話 - 胡蝶の夢  by 矢萩 秀明

中国の故事に「胡蝶の夢」と言う話がある。

昔、荘周は夢で蝶になった。
ひらひらとして胡蝶そのものであった。
自然と楽しくなり、気持ちがのびのびしたことだった。
自分が荘周であることはわからなくなっていた。
にわかに目覚めると、なんと自分は荘周であった。
荘周の夢で蝶になったのか、蝶の夢で荘周になったのかはわからない。しかし、荘周と胡蝶とには、間違いなく区別があるはずである。
こういうのを、「物化」というのである。

次元は違うが私は演奏する時にこの「胡蝶の夢」を思い出す。
次はどう弾こうかなどと考えているのでは、まだ自分と音楽の間に隔たりがある。
自分が演奏して音を出しているのか?
自分が音そのものなのか?区別がつかない・・。
そんな風に感じている時は集中力が最高に達している時だ。
こういう時にはいい演奏ができるものだ。
常にこのモードに入れればよいのだが・・・。
                             矢萩秀明  

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