コラム - 第10話


第10話 - 詩人の友への手紙  by 矢萩 秀明

こんにちは。

いただいた質問は、難しいものでしたのでお答えするのに時間が必要でした。

今日から一週間の演奏旅行にでます。
今、京都に向かう新幹線の中でこの手紙を書いています。


この世界で起こっているすべての事は、偶然のように見えても何かの法則に従って動いているのではないか?と思ったことはありませんか?

この星々を運航させ、地球を回転させ、草木を成長させる力が宇宙には満ちていると感じませんか?


それを神と呼ぶか、仏と呼ぶか、原理と呼ぶかはさておき、この世界は宇宙を貫く根本法則によって律されているようです。

この世界は音楽に似ています。
音楽には、メロディ、リズム、ハーモニーの三つの要素があります。
メロディは旋律と約され、法則に従った音階の動きを言います。
リズムは律動と約され、法則に従った音の動きを言います。
ハーモニーは和声と約され、音と音の調和を言います。

いずれにしてもある原理や法則、規則に従ってこそ成り立つのです。

私たちの世界は、夜の闇を太陽の光が追い払ったと思えば、いつのまにかまた闇が辺りを覆い尽くします。
太陽と月は追いかけっこを繰り返し、星々は季節に合わせて忙しく模様替えしています。

季節は四つの神が交代する度に姿を変えて私たちを楽しませます。
草木は枯死再生を繰り返して命をつないでいきます。
私たちの体の中でも心臓や肺は律儀に収縮を繰り返し、脈や呼吸は一定のリズムを刻みます。

音楽がリズム(律動)によって律されているように、これらすべてのものは宇宙を貫く根本法則(宇宙のリズム)に依って律され、調和を保っています。

芸術であれ経済であれ、学問であっても、すべてのものはこのリズムに則った時に価値を生み、リズムから外れた時に害を及ぼすのだと思います。

ですから宇宙のリズムに合致した活動をすることが私にとって大切なことだと考えています。
傍らの雑草にも、見慣れた風景の中にも、そのリズムを感じ取り、人に分かる形にするのが芸術家の仕事です。
そうした時、偶然は普遍になり、一瞬は永遠になります。
無価値に思えたものに価値を与え、意味の無いものに新しい意味を与えます。


こうしたことは誰にでもできることではないようです。
こうした心と感性を持ち、それを表現する技術と知識を調和させた人・・それが芸術家だと思います。

長くなってしまいましたね。いかがですか?


窓の外の景色は近景ほど速く過ぎて行き、遠景ほどゆっくりと過ぎていきます。

近くにいる人は忙しく、遠くにいる人は懐かしく感じるのに似ていますね。

詩人の友へ

2007年11月12日                   矢萩秀明

戻る | 第11話へ
Copyright (C)2001-2005 Hideaki Yahagi. All right reserved.
当ページに掲載されている全ての画像、文章、データの無断転用、転載をお断りします。