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コラム
矢萩 秀明 - コラム01
第1話 - 腱鞘炎について  by 矢萩 秀明
いきなりこんな話題でやる気をそぐようだけど、最近、練習のあまり腱鞘炎になってしまった人がいたので、予防の意味を込めてお話します。


ギターを弾くための手の使い方は非日常的なものが多い

 人間の手ほど多岐にわたって見事な機能を発揮するものはありません。この世で人間の手ほど優れた道具はないでしょう。物をつかんだり、つまんだり、はじいたり、押さえたり、めくったりとても器用に仕事をしてくれます。しかし、その手のほとんどの能力は日常生活を基盤として身に付けられたもので何か特殊な未経験な動きに対してはとても無器用です。残念なことに我々の愛するギターは、人間工学的に考えるととても特殊な手の使い方をする楽器なのです。

 ギターを弾くときの右手の使い方や左手の動き方を考えてみてください。日常生活の中でこんな手の使い方はほとんどみられません。ですから初めてギターを弾こうとした時、自分の手が思い通りに動かなくなったように思えたのも無理の無いことです。熟達したプロの手の動きは、日常生活から見るとかなり異常な手の動きであると言えます。これをマスターするのには時間がかかり、努力が必要なことを理解してください。


必ず休みをとって

 定期的・継続的に練習を続けていると、その中に適度な休憩を入れても、練習の効果は無くならず、かえって脳の中でその練習内容への整理と理解が進みます。私たちが手や足を思い通りに動かすことができるのは、長年の経験から脳がどのような命令を出せば手足が思い通りに動くのかを知っているからです。ギターを弾くという手の動作は日常的な手の使い方ではありませんから、脳がどのような命令を出したら上手くギターが弾けるのかまだ良く分からないわけです。そこでゆっくり練習してその手順を脳に覚えさせるわけですが、それには少し時間がかかります。練習の合間に小休止を取ったり、まとまった時間の休憩を取ったりして練習の間ずっと使っていた脳を休ませます。脳はその間に練習で学んだ動きを整理して理解します。3日やっても4日やってもなかなか上手く弾けないことがあって、もうやめようかなと思って5日目は一日休んでしまった。しかし、5日目に気を取り直して練習してみると以外にもできるようになっている自分を発見して驚く事があります。これは連日の練習の結果を毎日の睡眠や一日休んだ事で、脳が整理・理解し、定着させるというシステムが働いたからです。複数の違った練習を交互に行なうのも、たとえそれが時間的に連続したものであっても、今練習している内容以外のものに対しては有効な休憩を取っていることになり、その間に脳の整理・理解・定着が進みます。


指を大切にする

 ギタリストが抱える技術上の問題の90%は、ピッキングとフィンガリングの問題です。指の柔軟性(指の柔らかさ)と指を速く動かす事とは密接な関係があります。指が冷えていると、指が縮んで硬くなり、なかなかスムーズに動かないものです。そんな時は無理に速く動かそうとせずに、まず指を暖めそれから基礎的な運指の練習を1時間程やってウォーミング・アップをします。ナルシソ・イエペスは熱い蒸しタオルで手を温めてから練習を始めるそうです。また、重い物を持つと節くれだった硬い手になってしまいますから、できるだけ重い物を持たないようにします。何か作業をする時も、指先の皮膚が荒れたり爪を割ったりしないようにできるだけ手袋などをするようにします。バレー・ボールなどの突き指の心配があるスポーツも避けた方が賢明でしょう。アルバイトを選ぶ時も手に怪我をする危険のある仕事はできるだけ避けるほうが良いでしょう。引っ越しのアルバイトをして、トラックのリフトに指をはさみ左指を切断してしまった人もいます。彼は幸い手術で指を再びつなぐことができましたが、残念なことにギターをあきらめなければなりませんでした。


腱鞘炎について

 もうひとつ、ギタリストが注意しなければいけないものに腱鞘炎があります。腱鞘炎は右手(左手のこともある)の指の使い過ぎが原因で起こる病気で、右手全体が痛んだり熱をもったりしてギターが弾けなくなります。そして、ひどい時には腕や肩、首にまで及びます。腱鞘炎の医学的な原因はまだ分かっていません。ですから当然、誰にでも効果的と言える決定的な治療法もありません。しかし、まったく治らないわけではありません。腱鞘炎にならないようにすることと、初期の段階に早めに治療すれば多くの場合治ります。

 腱鞘炎になる前から肩が張っていた。偏頭痛が起きた。指がこっている。指が痛い。指が痛かったがギターを止められない状況だった。何となく指が変だと思ったがギターを弾くのを止めなかった。こうした時には注意!こうした時には腱鞘炎になりかかっている恐れがあります。ギターを弾かずに日常生活でもなるべく痛い手を使わないようにします。痛みが取れるまではギターを弾いてはいけません。痛みが取れてからまたギターを弾く時は、できるだけストレッチを使わないで楽なフォームで弾くように注意してください。もし、前より短い時間でまた痛くなるようなら、症状は悪化しています。こんな時は、潔くしばらくギターは弾くのをやめて、治療に専念してください。熱を持って来たら冷やします。消炎薬を塗るのも良いでしょう。整形外科に行ったり、針治療をしたりすることも考えられますが、人により効果がある人と無い人がいるようです。基本的には身体をリラックスさせる事が最も重要です。どこか身体にこった所があったら、マッサージしてこりを取ってください。ビタミン剤、クロレラ、カルシウム剤など身体の自然治癒力を高めるものも効果があるようです。また、腱鞘炎になるのはフォームに問題がある事が多いので、自分の指のフォームや手首のフォームや全体のフォームを見直す必要があります。


実際の体験例

1.N(Gt)さんの例

 フィンガー・ストレッチのきついクローズド・ボイシングのコードを夢中になって弾いているうちに左手の肘から手首の間の腱が痛くなってきた。かまわず弾いている内に腱鞘炎になってしまった。練習の仕方(時間配分)が偏っていたのも原因ではないかと思う。整形外科で電気治療を受けて、とにかく手を使わないようにして3週間で完治した。

2.W(Bass)さんの例

 ある日突然左手の薬指が曲がったまま伸びなくなった。整形外科では動かさないように固定しようと言うので、これはダメだと思い整体マッサージに行ってみた。ここでは、伸びなくなるといけないので、まず曲がった指を伸ばしましょうと言うことになり、待ち合い室にはTJさんの激痛に耐えかねた絶叫が響き渡った。その後、お湯の中で指を暖めてはマッサージをくり返すことによりだんだんと治ってきました。完治するのに2年かかったそうです。


 腱鞘炎の治し方については、まだはっきりしたことは分かっていません。腱鞘炎を治した経験のある方は体験談をお知らせください。
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