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コラム
矢萩 秀明 - コラム02
第2話 - スタイルについて  by 矢萩 秀明
 自分の音楽的スタイルを作る(持つ)といった場合、「スタイル」とは何でしょう?「スタイル」を形作る要素とはいったい何でしょうか?「スタイル」という言葉は辞書によると「独特のふう、体、流儀、様式、やり方」などと出ています。私達は音楽に関してこの「スタイル」という言葉をどのように使っているでしょうか?

 「彼の弾き方はまるでエリック・クラプトンのスタイルだ。」
 「あの曲をこんどはカントリーのスタイルでアレンジし直してみた。」
 「やつは本当に個性的なスタイルを持ったミュージシャンだ。」

 こんな風に使っていると思います。ここでは「テクニックに関して」「ジャンルの特徴」「人生の生き方」と言った意味で使われています。これをもう少し詳しく考えてみましょう。

 ジャンルについて考えると、主なジャンルは次のようになります。

1.ブルース
2.カントリー
3.クラシック
4.ラテン
5.ロック
6.ジャズ
7.エスニック

 テクニックなどの具体的要素

8.技術・奏法
9.音色
10.リズム
11.和声のセンス

 音楽的な考え方

12.コンセプト・音楽の成り立ち
13.アド・リブの素材
14.アプローチの仕方

 精神的な要素

15.家庭環境
16.生活上の経験
17.精神性・性格
18.主義・主張

 一口に「スタイル」と言ってもこのように多くの要素を含んでいて、これらの要素が複雑にからみあってそれぞれのスタイルを形作っているのですから、人それぞれ皆違うスタイルを持っていると言えます。ですからあえて「何々のスタイル」と言うからには他ときわだって違う特色が有るわけです。スタイルを形作る要素の中には具体的に言葉にすることができないものも多くありますが、一般的に必要と思われるジャンルやリズム、奏法について取り上げ、分析・研究していくことはミュージシャンとして大切なことです。


 「スタイル」に関して日本の現状はどうでしょうか。

 一般的にアメリカのミュージシャンはジャンルやスタイルを大切にしています。アメリカには流行には関係無く多くのジャンルやスタイルが共存しています。昔ながらの泥臭いブルースを歌い演奏し続けている人達もいれば、モダンなジャズを演奏する人もいます。ロックの人もいればラテンをやる人もいます。そしてそれらの人達が自分のスタイルを守りながら同じ街で生きています。それぞれの専門家が専門の音楽だけで生きていけるわけです。(ただし、商業的に成功し金銭的に恵まれるかどうかは別問題ですが…)また、これらの音楽がぶつかり合い混じり合って新しい音楽が生まれて来るのですが、その土台ががっしりしていて、もしその音楽を学びたければリアルタイムで本物を見ることができるわけです。では、私達の住む日本ではどうかと言うと日本ではそれほどジャンルやスタイルは大切にされていません。それは日本人の国民性や音楽の層の薄さなどにも原因があります。

 日本人は昔から外国の文化を取り入れそれらを自分の物にし、さらにそれ以上のものを生み出していくということに優れています。しかし、悪く言えばあっちこっちから何でもかんでも取り入れてごちゃごちゃにしてしまうとも言えます。

 また、音楽人口(ここでは実際にCDを買ってくれる人や実際にコンサートなどのチケットを買ってくれる人のことです)の少なさや、国の政治(コンサートへの税金の掛け方や文化政策。国民に生活の余裕が無ければ音楽どころではありません)などによって音楽家が自分の音楽だけで生きていくのは大変難しくなっています。そこで日本の音楽家(特にポピュラーの)は、ある程度色々なジャンルやスタイルをこなさなければいけなくなるわけです。これは良く言えば「さまざまな音楽を融合させた柔軟性の有るスタイル」とも言えますし、悪く言えば「器用貧乏のなんでも屋」とも言えます。もちろん、さまざまな音楽を融合させた上でさらにその人の強力な個性が出ていればりっぱなスタイルであると言えるわけです。


 さて、では私達はどうしたら良いのでしょう。

 日本の現状が上に書いたような状態であるからと言ってなにもこれからプロになって行こうとする君達までがそのとうりにする必要はないのです。一つのジャンルだけをやる、反対に色々なジャンルをやりたい。どちらを取るのかはあなたの自由です。選んだ道によって経済的な収入はそれぞれ違って来ますがそれはその人の責任であって、どちらが良い悪いの問題ではありません。どちらにも大切なのは自分のスタイルを持つと言うことです。

 音楽を勉強するということは簡単に言うとまねをすることです。新しく音楽に出会って「かっこいい!」と思うと次には同じようになりたいと思ってまねをするものです。しかし、そっくりまねをしようとしてまったく違う別のものができてしまうことがあります。また、すでにまねできていた事と新しくまねをしたことが混じり合ってしまうこともあります。こうして多くの新しいスタイルができました。

 例えばブルースではブルース・シンガーの音程をずり上げたり下げたりする歌い方をまねしてチョーキング・テクニックができました。

 バンヘイレンは、アラン・ホールズワースのワイド・ストレッチを多用したフレーズをまねしてみましたがうまくできないので、とどかない音を右手の指で押えてみたことからライトハンド奏法ができたと語っています。

 またフランク・ギャンバレは、ジャズ・ギタリストがある種のフレーズをワン・ストロークのピッキングでとても速く弾いているのを見て、それを全てに使えないものかと考えスウィープ・ピッキングを完成させました。

 また、白人ミュージシャンが黒人のブルースをまねしようとしてクリームに代表される初期のブルース・ロックができたことは有名な事です。

 ここでは「まねをしようとして新しいものができた。」ということと、「何も無い所から新しいものができたわけではない。」という事が大切なのです。つまり、まねした事を自分のフィルターを通して表現することによって新しいスタイルができるわけです。 例えば、音色という要素を考えた場合、それこそ色々な音色があるわけですが、ある人は歪んだ音色が好きだとします。この人がジャズのフレーズを学びました。この人にとっては新しい要素であるジャズのフレーズをこの人の得意な要素である歪んだ音色と言うフィルターを通して表現すると、「ジャズ・ロック」「フュージョン」「ビバップ・ロック」とでも言うような新しいスタイルが生まれました。マイク・スターンやスコット・ヘンダーソンなどがその例です。このような例を他にもさがして参考にすると良いでしょう。

 では次にジャンルについて考えてみましょう。

 音楽をジャンル分けすること自体ナンセンスだと言う意見もありますが、ある音楽の持つ特徴、音楽をその音楽らしくしているポイントをまとめて名前を付けたものを「ジャンル」と呼ぶとすると、色々な音楽のベースに成っているいくつかの重要なジャンルがあり、これを学ぶことは自分の音楽スタイルを確立する上でとても大切なことです。

 まず音楽を重要な基本的なジャンルに分けると次のようになります。

 基本的なジャンル

1.ブルース
2.カントリー
3.クラシック
4.ラテン
5.その他の民族音楽(ワールド・ミュージック、エスニック)

 そして後はこれらのミックスの具合で他の色々なジャンルができあがります。この中でもロックン・ロールやロカビリー、ブルース・ロックやカントリー・ロック、ジャズやR&Bなどアメリカの音楽のほとんどはブルースとカントリーのミックスからできていると言ってもいいほどです。初期のロックはイギリスでクラシックやヨーロッパの民俗音楽と結び付いて「ハード・ロック」が生まれ、リズム・&・ブルースはやがてソフィトケイトされて「ソウル・ミュージック」が、リズムが強調されて「ファンク」が生まれました。ジャズもこれらの色々なジャンルの影響を受けてさまざまなスタイルができました。また、「ラテン・ミュージック」は南米において白人のヨーッロッパ音楽と黒人のアフリカン・ミュージックが結合して生まれ、他の多くのジャンルに大きな影響を与え続けていると同時に、ロックと結び付いて「レゲエ」が、ジャズと結び付いて「ボサ・ノバ」などが生まれています。

 これらのジャンルが形成された歴史やスタイルの特徴を学ぶことは私達、現代に生きるミュージシャンに未来の新しい音楽を作るヒントを与えてくれることでしょう。
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