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コラム
矢萩 秀明 - コラム05
2001/8/17〜19青山円形劇場での機材
第4話 - 練習方法について  by 矢萩 秀明
 上手くなるためには練習が必要不可欠ですが、ではどのように練習したら良いのでしょうか?練習の組み立て方や 考え方、効果的な練習のポイントなどを説明します。


練習は常に楽しく創造的に

 
練習は技術と能力、音楽的センス、そして精神の成長のために行ないます。これをどれだけやったかによってその人の音楽家としての寿命が決まると言っても良いでしょう。練習には2つのタイプがあります。ひとつは、最終的なゴールへ向かっての長い期間をかけた練習で、テクニックだけでなく全体的な音楽性の向上を狙ったものです。もうひとつは、短時間で効果を得るための練習で、忙しいスケジュールの中で短時間に必要なものをマスターする為のものです。

 こう言うと後者の方法だけを求めたがるものですが、特効薬だけではその時はしのげても長い音楽家の人生を送るだけの体力をつけることはできません。やはり長期的な計画を持った毎日の地道な練習が大切です。

 このような練習は、感覚・聴覚・肉体そして音楽的直感を総動員して行なうのが理想的です。練習をするたびに何かを発見したり、工夫を加えたり、想像力を働かせて音楽的な冒険をしてみたりといった事があれば練習はとても楽しいものになります。

 しかし、そうした創造的でない単に機械的な練習は、その肉体的な作業自体への慣れを生み出すと同時に、その練習が効果的であるかどうかに関わらず自分は練習をしていると言う安心感や満足感を生み出します。そうした心の油断は、ちょっとした所に隠されていた音楽的なヒントを発見したり、新鮮な驚きを感じたりすることをせずに、かえって何も見ないで何も発見せずに練習を終わってしまう原因になるでしょう。

 練習は常に楽しく創造的・生産的になるように工夫したいものです。


自分を正しく見つめる

 練習というのはある意味でとても個人的な行為です。ですから、練習の内容は個人の上達の程度に応じて変化するものです。次の話を考えてみてください。

 ある時、音楽を学び始めた学生が彼の憧れのギタリストと話をするチャンスをつかみました。学生がその有名なギタリストにどのくらいの時間スケールを練習するのか尋ねると、その答えは「全くしない。」でした。そこでその学生はスケールを練習する必要はないのだと考えました。次に、スケールを使ってどのようにしてあのような素晴らしいソロを作るのかと尋ねると、「感じたままを弾くだけだ。」という答えが返ってきました。そこでこの学生はフィーリングさえあればいいのだと考えました。

 あなたはこの学生の判断をどう思いますか?この学生の判断には初心者が陥りやすい誤りがあります。それは自分の音楽的な力量を正しく見ていない点です。

 例えばこの学生は、その有名ギタリストがすでに素晴らしいスケールを弾くテクニックを持っているのに、自分はどうにか指を動かしているだけだという現実を全く見ていません。有名ギタリストは過去の練習と豊富な経験に裏づけられたフィーリングを持っているのに、自分の感覚は音楽的にはまだ幼稚園のようなものだということに気づいていません。

 練習を組み立てるには、まず自分自身の得意、不得意について謙虚に正しく知ることが必要です。


自己流では無く、基本に忠実に練習する事

 音楽学校に入学すると、初めに技術的な基礎を学ぶ事になります。多くの基礎練習はとても忍耐と集中力のいる作業で、けっして楽しい物とは言えないかも知れません。そして、これらの基礎的な技術はマスターするのに時間のかかる物ですから、毎日練習していると嫌になってしまうかも知れません。

 すると中には、自分は自分なりのやり方で演奏できるのにどうしてレッスンで習ったやり方で演奏しなければならないのか?と疑問を感じる人も出て来るでしょう。自分なりのやり方を「自己流」と言いますが、この言葉には所詮ある程度以上のものでは無いし、それ以上のものも期待できない状態にあるといった意味が込められています。

 人間には、訓練によって感性や知性を伸ばし、肉体的な能力を拡大させる機能が備わっています。だからこそ練習の効果が期待できるわけですが、この「練習の効果」とは「反復の効果」でもあります。

 例えば、私達が自由に言葉を話せるのも、思い通りに歩けるのも、手を使って様々な事が処理できるのも、全て生まれてからずっとこれらの事を長い時間をかけて繰り返してきたからだと言えます。

 さて、ここで問題に成るのは、この反復効果には良い面も悪い面もあると言うことです。例えば、自分の悪い点はなかなか分からないものです。自分では細心の注意を払って努力をしているつもりでも、そこに意外にも何かの欠陥が含まれていた場合、その欠陥までも丸抱えで身に付ける事になってしまいます。

 その人なりのやり方が身に付いたものを「癖」と呼びますが、もし悪い癖があったら病気と同じようにできるだけ早く原因を突き止め、適切な治療をする必要があります。なぜなら、遅くれれば遅れるほど病気は根深いものへと進行してしまい、場合によっては治らなくなってしまうからです。実にやっかいな事ですが、一度身に付いたものを取り去ったり、白紙に戻すことは、それを覚えた時の何倍もの労力を必要とするものです。

 つまり、間違ったやり方で練習を続けると、せっかく上手くなるために努力して練習しても悪い癖が更に定着してしまい、上手くなりたいと言う気持ちとは裏腹に、かえって練習すればするほど下手になると言う結果に成りかねません。これでは悲劇です。だからこそ正しい練習の方法を知る事が大切なのです。


明確なゴールを設定する

 練習から最大の効果を得るには、明確に設定されたゴールを持つことが大切です。練習には次の3つのゴールがあります。

1.最終的なゴール(長期的な計画)

2.週または一日ごとのゴール

3.課題内のゴール

 「最終的なゴール」とは、例えば自分のバンドを作りプロ・デビューしたいとか、一匹狼のセッション・ギタリストになりたいとか、海外に進出して世界的なギタリストになりたいとか、音楽学校の講師になりたいとか色々あるでしょう。

 もし、今の時点ではっきりしているのなら、そのために何が必要なのか情報を集めて、それをマスターするための計画を立てれば良いのです。

 計画をより具体的にするために、最終的なゴールを何年後に実現するのかを仮に決めて、そこから逆算して行くと良いでしょう。もし、仮に自分のバンドを作り5年後にプロ・デビューするとしたら、その1年前にはどこかのレコード会社と契 約に漕ぎ着けていなければいけないでしょう。

 そのためにはさらにその1年前までに、レコード会社が認めるだけのライブでの実績(活動歴や集客数)作りやプレゼンテーションのためのライブやデモ・テープ作りが必要でしょう。そしてその前に、バンドのメンバーを探したり、曲を作ったり、リハーサルを重ねることになるでしょう。さらにその前に、ギターのテクニックだけでなく作曲やバンド・アレンジ、さらにバンド運営の仕方や売り込みのための方法を学ばなければいけません。海外に進出したいのなら、まず語学が必要でしょう。このように考えると今自分が何を学んだら良いのか、そしてそのためにどのような練習をしたらいいのかがはっきりします。

 もし具体的な目標がまだはっきりしていないのなら、より高くゴールを設定した方が良いでしょう。プロのレベルに向かって努力することで、プロとして求められるレベルについてはっきりとしたイメージを持つことができ、自分がプロへの道を選ぶかどうかを判断する材料にもなるでしょう。

 2番目の「週または一日ごとのゴール」というのは、まず自分のスケジュールから考えて練習可能な時間を曜日ごとに割り出して練習時間を決め、練習の種類や内容を考えて計画を立てます。もちろん計画通りに行かないことも多いでしょうが、こうすることによって目的の無い練習で時間を無駄に過ごしてしまう事を防ぐことができます。レッスンで出された課題や宿題をやる時間も考えておきます。

 3番目の「課題内のゴール」とは、その練習が何を目的としているのかをはっきりさせることです。左手の移動をスムーズにしようとしている時に右手のピッキングのことばかり気にしていては練習がなかなか進みません。

 またマスターするのに長い時間がかかるテクニックはある程度のところでその日の練習を終わらせないときりがありません。

 このように練習の計画を立てることは、生活の中で練習時間を優先させるための良い方法です。プロのギタリストになるのが目的なら、練習時間は優先させなければならないでしょう。もし、こうした練習時間を重荷に感じ拘束されるのが嫌だと思うなら、プロのギタリストになるという目的を見直す必要があるでしょう。

 計画を立ててもなかなか計画通りに行かない事もありますが、あまりそんな状態が続くようなら、計画自体に無理が無いか、生活に乱れは無いか、自分の目的意識や情熱などについて再確認する必要があります。

 プロのギタリストにアマチュアの時にどのくらい練習していたかと質問してみると、「練習はまったくしなかった。」などと言う返事が返ってくることがよくあります。これは本当でしょうか?ある面では本当であり、ある面では嘘です。

 つまり、練習無しでギターが上手くなる事はありえませんから、練習しなかったと言うのは嘘でしょう。ただその人が練習を練習だと感じていなかったらどうでしょう?例えば、ギターを弾く事が楽しくてしょうがない。音楽の事は何でも知りたい。ピックの角度がちょっと違ったらいつもと違う音がした。面白くなってああだこうだやっている内に夜が明けて朝を迎えていた。でも、おかげで気がつくとピッキングの角度をコントロールできるようになっていた…。

 さあどうでしょう?この人は練習したのでしょうか?この人のした事は他人から見るとまぎれもなく「練習」です。しかし、この人にとっては「大好きなギターと一緒に過ごした楽しい時間」なのです。ですからこの人は練習した事が無いと本心から言えるのです。


どのくらい練習時間を取ったらいいか

 音楽的な感覚や筋肉や直感は、定期的・継続的に使ったほうが最も良く成長すると言われています。

 ある人は、一週間に毎日1時間ずつ5日間練習しました。その人の練習時間の合計は5時間です。別のある人は同じ練習を一日だけ5時間やって後は次の週まで練習しませんでした。この二人を比べると毎日練習する人の方がずっと上達します。

 つまり人間は定期的・継続的に練習した方が確実に速く上達します。

 しかし、多くの学生は気分が乗った時だけ良く練習し、気分が乗らないと全然練習しないものです。これがもし、自分を強制して嫌々練習するよりも、気分が乗った時に練習した方が効果が高いと自然に感じているからだとしたら、一概に良くないことだとは言えないかも知れません。しかし、どんなギタリストもコンサートのたびにいつも気分が乗って演奏しているとは限りません。どんな状況の中でも最低限のプロ・レベルの演奏ができることが重要です。そのための訓練は毎日の練習の中にあります。毎日定期的に練習の時間を取り、練習する習慣をつけることが大切です。

 レッスンのスケジュールによって、一日の中のどこで練習時間を取るかは限られてきますが、練習の時間を一日の中で分散させることによって効率良い練習ができるでしょう。また、これは手に負担をかけないためでもあります。

 一回の練習時間を45分から50分程度に押さえ、その後に15分から10分の休憩を必ず取って手を休ませます。こうした練習を一日の中で分散させ、トータルで3〜5時間の練習時間を確保したいものです。

 もし、どうしてもまとまった時間が取れないようなら、その日の練習は短時間に済ませて、時間のある日に練習時間を増やせば良いでしょう。

 よくアルバイトの時間が長くて練習時間が取れないとか、深夜のアルバイトをしているので午前中の授業に出れないとか言う学生がいます。このような人には、何のために音楽の学校に入ったのか、その目的をもう一度確認してみることをすすめます。

 長い人生の中で、音楽だけを考えて生活できる時は今のこの2年間しかありません。学校を出てからは社会の荒波が待っています。毎日の生活に追われ、流されはじめます。どんなにしっかりした心の杭を打ち込んで、流されないようにしようとしっかりしがみついてみても、全然流されない人などいないのです。毎日が戦いで、多くの人は敗れ去って行きます。そしてある日、自分が歳を取って来ている事に気がつきます。もうその時には遅いのです。もうあの宝物の2年間は二度と帰って来ません。生活費や授業料を自分で稼がなくてはならないと言う状況の人は、大変厳しい中で一生懸命がんばっています。とても偉いと思います。しかし、そのような人達にもやはり同じ事を言いたいのです。親に甘えられるのも今の内です。何とか親に理解してもらって援助してもらい、アルバイトをしないかまたは減らす事ができないかどうか検討してみる事をすすめます。そして、この2年間の内に少しでも多くの技術と知識と能力を身に付けてほしいのです。


練習の内容について

 練習の内容は、その日のレッスンで学んだ事の復習や次のレッスンへの予習、宿題や課題の練習をするのはもちろんのことですが、長期的なゴールのための練習を忘れてはいけません。これは全体的な音楽性を向上させることを目的にしていますから、テクニックの練習だけでなく知識を増やし、能力を向上させるための練習もプログラムに入れます。

 GITの講師をしているあるギタリストの一日の練習のメニューを紹介します。彼は毎日このプログラムを実行しているそうです。

1.デイリー・エクササイズ(ウォーミング・アップ)

2.基礎テクニック(マスターするのに時間のかかるもの)の練習
  例スケールやアルペジオ(コード分解)など

3.フレーズ

4.コード&リズム

5.読譜練習

6.視唱(ソルフェージュ)練習

7.曲の練習

8.音楽鑑賞、コピーおよび分析研究

9.理論書および音楽書の読書

10.楽しんで弾く
   (シークェンサーやマイナスワン・テープやギター・デュオetc)

以上

 これは理想的な練習プログラムですが、学生の場合はさらに次のような点を加えると良いでしょう。

11.その日のレッスンで学んだ事の復習

12.次のレッスンへの予習

13.宿題や課題の練習

14.特にできないことの練習

 ただ練習できる時間が限られている場合、これらの練習項目全部を毎日消化するのは大変なことなので、週間スケジュールの中に分散して、できるだけまんべんなく練習できるように工夫しましょう。


自分を非難してはいけない。

 練習している時、自分のしていることを注意深く観察するようにします。うまくできないからといって自分を非難してはいけません。「だめだ。」「できない。」などと言う言葉は自分にとって何のプラスにもなりません。かえって練習の楽しみを奪ってしまうだけです。それよりもなぜ上手く行かないのかを客観的に観察することです。

 練習しているもの全体が駄目なのか、それとも部分的に問題があるのかを探ります。上手く行かないのには必ず何か原因がありますから、その原因を見つけて直せば良いのです。悪い部分やその原因をはっきり認識しないままただ何となく練習を続けても練習の効果はあがりません。

 また、上手く弾ける部分と上手く弾けない部分とを比較するのも良い方法です。上手く弾けている部分の指の動きはどうか?ピッキングは?上手く弾けない部分の指の動きはどうか?同じだろうか?どこが違うのだろう?といったことを考えてみることによって何を練習するべきなのかがはっきりするでしょう。


必ず適度に休憩する。

 定期的・継続的に練習を続けていると、その中に適度な休憩を入れても、練習の効果は無くならず、かえって脳の中でその練習内容への整理と理解が進みます。

 私たちが手や足を思い通りに動かすことができるのは、長年の経験から脳がどのような命令を出せば手足が思い通りに動くのかを知っているからです。ギターを弾くという手の動作は日常的な手の使い方ではありませんから、脳がどのような命令を出したら上手くギターが弾けるのかまだ良く分からないわけです。そこでゆっくり練習してその手順を脳に覚えさせるわけですが、それには少し時間がかかります。練習の合間に小休止を取ったり、まとまった時間の休憩を取ったりして練習の間ずっと使っていた脳を休ませます。脳はその間に練習で学んだ動きを整理して理解します。3日やっても4日やってもなかなか上手く弾けないことがあって、もうやめようかなと思って5日目は一日休んでしまった。しかし、5日目に気を取り直して練習してみると以外にもできるようになっている自分を発見して驚く事があります。これは連日の練習の結果を毎日の睡眠や一日休んだ事で、脳が整理・理解し、定着させるというシステムが働いたからです。複数の違った練習を交互に行なうのも、たとえそれが時間的に連続したものであっても、今練習している内容以外のものに対しては有効な休憩を取っていることになり、その間に脳の整理・理解・定着が進みます。


問題点の見つけ方

 曲を弾く時に問題になる点は、ほとんどメカニカルなテクニックの問題です。問題点を分析して見て、その原因が右手か左手のどちらにあるのかを注意深くさがします。簡単にその原因を知るために、まず左手(フィンガリング)だけで弾いてみます。上手くいかない時は、左手の運指をまだちゃんと把握していないことになります。左手だけで上手く弾けるのに、右手のピッキングを加えると上手くいかない時はピッキングに問題があります。ピッキングの順番をもう一度正確に考えましょう。こうして、より問題が大きい方の手を先に練習します。

 これらの問題は大きく分けて指の動きの整理ができていないか反射の問題です。指の動きが思い通りにコントロールできなかったり指の動きが大きすぎる場合は、指の動きの整理ができていないことに原因があります。指が速く動かない時は反射に原因があります。

 指の動きの整理ができていないと言うのは、指を動かす順番つまり運指をはっきり理解していないと言うことです。この問題を解決するためには、問題のある手だけによって非常にゆっくりと練習することです。弾きながら指の動きを良く見て、指に一本一本動きを教え込むようにして指が正確に動くように訓練します。どんな風に指を動かしたら良いかがはっきりしたら、頭の中でその動きを思い浮かべてみます。その時、何弦何フレットを何の指で押さえるのかできるだけ具体的にイメージしてみます。それはあたかもボクサーのシャドー・ボクシングのようなものです。この時、ギターを弾く必要はありません。イメージが終わったらまたゆっくりと正確に弾いてみます。このように指の動きをコントロールしながらのゆっくりとした練習と、頭の中での練習とを交互に繰り返します。柔軟な指の動きは単に指先の練習だけから得られるものではありません。いき過ぎた練習は逆に指を疲れさせ柔軟さを失くします。

 指の動きをイメージできる柔軟な頭脳が重要なポイントになります。しなやかな指の素早い動きや自然な音楽の流れなど、これらはすべて柔軟な頭脳から生まれます。正確な技術は厳しいトレーニングから生まれますが、いわゆるイメージ・トレーニングが占める割合も大きいのです。

 もし、反射に原因があるなら、まず問題の部分をできるだけ速く弾いてみます。正確さにとらわれず、指を速く動かす事を考えます。もしその部分全体を弾ききる事ができなかったら、できる所までいっきに弾いて休みます。こんな風に一気に続けて弾ける音の数を増やして行きます。

 これらの練習で大切なのは、指の動きを良く見て、問題が本当に反射にあるのか、それとも指の動きの整理ができていないことに原因があるのかを常にチェックすることです。もし原因が両方なら、次のようにして練習してください。

 複雑なフレーズやメロディーも、部分的に見てみると簡単に弾けるものだったりします。これらが組み合わされた時に難しくなるわけですから、弾こうとするフレーズやメロディーをまずいくつかの小さな部分に分けてみます。その中の上手く弾けない部分の指の動きを整理してゆっくりと練習しながら覚えます。ある程度覚えたら今度は部分的に一気に目標のテンポで弾いてみます。弾けたら次の部分に進みます。もし弾けなかったら、もう一度指の動きを整理する練習からやりなおします。こうして全ての部分が部分的になら弾けるという状態になったら、次にこれらを順番に続けて弾く練習に入ります。この練習も初めはつながりの部分の指の動きを整理して覚えることから始まり、次に目標のテンポで弾いてみるという順に練習してください。こうして続けて弾ける長さをだんだん長くしていきます。


曲の練習をする時の注意

 曲の練習をする時、初めに部分的に何度も繰り返しながらゆっくりと練習するのは言うまでもありませんが、曲の最終的な仕上げの練習においては人前で演奏するつもりで弾くようにします。けっして弾き直してはいけません。

 大ホールの何万人ものお客の前で弾いていると思ってください。

 一人でいる時に弾いたドレミファソラシドと大ホールの何万人ものお客の前で弾いたドレミファソラシドとは全然重みが違うのです。また、一人でいる時にどんなに上手く弾けても、人の前で弾いた時に上手く行かないのではプロとしては何の意味もありません。

 よく曲を演奏していて間違えると、その部分を繰り返したり、初めから弾き直そうとしたり、時には分からなくなって完全に止まってしまうこともあります。これは、「家ではちゃんと弾けたのに」「こんなはずじゃなかった。」「自分はもっとできる。」などと、綿密に引きすぎた設計図通りに実現できなかったことに対する心理的葛藤が原因です。このような心理は取り払わなければいけません。

 間違えたことに必要以上にリアクションを取らないようにしてください。

間違えた瞬間ドキッとしますが、だからと言って照れ隠しに頭を掻いたり、悔しがって舌打ちしたり、動揺したりしないようにします。

 音楽は時間芸術です。音楽は、初めの一音が鳴り出した瞬間から、最後の一音が鳴り終わるのに向かって時の流れの中を自然に進んで行きます。それは上流から下流に流れる水のようなもので、水の流れに逆らえないのと同じように時間を戻すことは不可能です。もし一拍でも弾き直したら、そこから先は一拍違いのまま別の音楽になってしまうのです。間違えた事はもう過去の事です。どんなに後悔しても間違いが消えるわけではありませんし、今の演奏に良い影響を与えるわけでもありません。知らんぷりして平然と通り過ごしてください。そして今の演奏に集中してください。もちろん間違えなければ一番良いのですが、ミスは誰にでもあります。プロだって間違えることがあります。生演奏においてプロとして大切な事は、ミスをしない事よりも間違えた時に被害を最小限に押さえることです。部分的にちょっとくらいミスがあっても全体にできが良ければそんなミスは問題にならないものです。名演と言われるCDにミス・トーンが入っていることが良くあります。

 途中で弾き直してきれいにまとめた演奏よりも、傷があって穴が開いていても拍子に乗って最後まで進んだ演奏の方が時間芸術である音楽の本質から考えると価値が高いのです。細かい事にくよくよするあまり大切な事を見失った演奏はとても聴きづらいものです。

 てすから曲の途中でどんな音が出てもけっして止まってはいけません。ともかく先へ先へと進んでいく推進力を鍛えることが大切です。間違えると止まる癖をつけてしまうと本番の演奏の時に自分だけバンドと合わなくなってしまうのは説明するまでもないでしょう。

 しかし、練習において曲の演奏が最後まで終わったら、今度は間違えた事を反省してください。しかし、それよりももっと大切な事は間違えた原因を探ったり、間違えた部分の指の動きを再確認することです。週に一度は録音して聴いてみて、一週間の練習の成果を検討します。その録音は残しておいて次の週の録音と比較してみるのも良い方法です。


 いろいろと練習方法について書きましたがこれらのアドバイスが皆さんの練習に役立つように祈っています。

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