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コラム
第6話 - 能力は脳力  by 矢萩 秀明
 演奏のうまい下手は技術だけの問題ではない。演奏をする時には実に様々な能力を使っている。技術はその一部に過ぎない。音符やコード・ネームを読み取る能力、記憶力、集中力、想像力、視覚、触覚、聴力、反射、瞬発力、持続力、計画力、直感、などあらゆる能力を総動員している。そしてこれらの能力を支配しているのが脳であるから「能力は脳力である」と言える。

「なかなか曲が覚えられない。」
「集中力が続かない。」
「同じようなミスを繰り返してしまう。」
「練習したことをすぐに忘れてしまう。」
「何もアイデアを思いつかない。」
「音楽を聞き取れない。」
「仕事が遅い。」

 こうしたことを感じることはないだろうか?自分は記憶力が悪いからとか年をとったからとあきらめていないだろうか?こんな諦めは誤解や迷信に過ぎない。人間の脳にはまだまだ開発されていない未知の能力がたくさん眠っているのだ。生まれつき脳の性能に差があるのも年齢と共に脳が老化していくのも確かだが、最近の大脳生理学の研究によると訓練によって脳の性能アップがはかれることがわかって来ている。

 私達普通の人は、脳神経細胞の3%(!)しか活用していないと言われている。それは細胞同士の結び付きがまばらで、大部分がネットワークを形成していないことを意味する。神経細胞同士は刺激を与えないで放っておくと、どんどん死滅し、ネットワークもあちこち切れていく。頭を使わないとどんどんダメになる。例えば「記憶力」。私達が何か新しい事を記憶する時、脳内では「シナプス」ができたり消えたりしながら新しいネットワークを形成する。何度も繰り返しやってくる情報は、シナプスへ反復して刺激を与え、信号の流れが良くなる。反復刺激によって新しいシナプスがどんどん作られれば記憶力は向上することになる。ではどのようにしたら脳力(能力)をアップすることができるのだろうか?


1.高速の音声を聞き取ることによって脳を活性化する

 普段、私達が言葉を理解する時、大脳の二つの領域が重要な役割を果たしている。感覚性言語野と呼ばれている「ウェルニッケ中枢」と、運動性言語野の「ブローカ中枢」である。この二つの中枢が正確に働くことによって私達は聴覚や視覚から入ってくる言葉の意味を理解している。この時、普段の3倍〜4倍のスピードで情報が入ってきたらどうなるか?2倍程度のスピードならたいていは聞き取れるが、3倍〜4倍のスピードだと初めは言葉として理解するのは難しいだろう。しかし、何度も繰り返している内にだんだんと単語が聞き取れるようになり、やがて文脈が捉えられるようになるはずだ。これは高スピードで入って来る言語情報を処理するために、大脳がかつてないほどフル回転するからである。そして、この刺激が脳内全体に拡がって行き脳が活性化することになる。1960年初頭にアメリカ陸軍やシラキュース大学などでの実験、研究によってその効果が証明され「速聴機」が開発されている。最近ではCDタイプの速聴機も発売されているようだ。また、繰り返し刺激を与えることが大事なので、音楽理論を覚える時など理論書を分からなくても最後まで読むこと。あごをたくさん動かすことも脳に刺激を与える事になるので、口をはっきり動かしながら早口で音読するのも良い。そして、何度も何度も読むこと。そのうちにだんだん理解力がついてくる。さらにただ知識を暗記するより体験したものの方が忘れない。紙に書いたり、声を出して読んだり、人に教えたり楽器で音を確認したり何か行動を通した体験として記憶すると忘れないものだ。


2.瞑想や呼吸法によるトレーニング

 いざと言う時に最高の力を発揮できる人とできない人との違いはなにか。それは自分の心の中の不安をいかにコントロールできるかできまる。その鍵を握っているのが脳波だ。脳波は大脳新皮質の神経細胞が出す電気的変化を記録したもので、次の4つがある。「ベータ波」は、 1秒間に13回以上振動する落ち着きのない脳波。仕事中やイライラしている時に増える。緊張したり興奮するとさらに振動数が増える。「アルファ波」は、1秒間に8〜13回振動する落ち着いた脳波。リラックスして目を閉じた状態の時に出やすい。この状態の時はカンやひらめきが生まれやすく集中力も増す。「シータ波」は、1秒間に4〜7回振動する脳波。居眠りしそうになったり、うたた寝などをしている時や目が覚めた直後のまどろんでいる時に現われる。「デルタ波」は、1秒間に0.5〜4回振動し、ノンレム睡眠と言う深い睡眠状態の時に顕著になる脳波。この時、大脳皮質も眠っていて、血圧や心拍数も安定している。脳波はその時の心理状態によって変化している。例えば、不安を抱えてクヨクヨしていたり、緊張して思うように行動できない時にはベータ波が優勢になり、逆にリラックスして頭が冴え渡った状態の時にアルファ波が優勢になることが分かっている。また、左脳は言葉や論理や意識をつかさどる脳であり、右脳はイメージや無意識をつかさどる脳であると言われている。ストレスがたまった緊張状態では左脳と右脳の連携が悪く、無意識の働きかけが妨げられる。逆に深いリラックス状態に入ると両脳の連携が良くなり、直感やイメージなどの無意識の働きかけが増大すると言われている。さらに、アルファ波は「メンタル・ブロック」を取り除くこともできるのだ。私達は普段「メンタル・ブロック」と呼ばれる否定的な意識の壁に阻まれて、なかなか思い通りに行動できない。「メンタル・ブロック」とは、「そんな事は自分にできるはずがない」「無理だ」「うまくいくわけがない」と言ったネガティブな考え方や心の持ちようの事で、ほとんどの人が無意識に持っている。しかしメンタル・ブロックは、脳の中をアルファ波で満たすことにより誰でも取り除くことができる。アルファ波は、瞑想や呼吸法などのトレーニングによって継続して出せるようになると言われている。簡単な方法としては自分の成功を信じること、決意することが大事だ。「自分は〜ができる」と口に出して自分に言い聞かせるのも良い。


参考文献:「頭のメカニズムを活用した頭の鍛え方、育て方」
       Brain Science
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