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コラム
矢萩 秀明 - コラム08
飛行機 Photo By H.Yahagi
第7話 - ミュージシャンの心得  by 矢萩 秀明
若き後輩のミュージシャンに贈る


待っていても仕事は来ない。人に会うべし!

 仕事が欲しいなら、会うべき人と会うことだ。「会うべき人」とは、プロデューサー、ディレクター、作曲家、作詩家、アレンジャー、インペグ、ミュージシャン、打ち込み屋さん、エンジニアなどの人達のことだ。コネを最大限に生かしてこの人達に近ずくこと。そういう意味で、ライブをたくさんやって人前にでるチャンスを増やすのは良い。飛び入り可能なセッションをやっているライブ・ハウス(できればプロが出入りしているような所がいい)に足繁く通って出演するのも良い。自分をアピールするためのプロフィールやデモテープ、写真、名刺(手作りのカードでも良い)などの宣材(宣伝材料の略)は必ず用意しておこう。G-WorksのS君はこの手で仕事をつかんだ。


仕事の輪に入るべし

 音楽制作の仕事は色々な職種の人による連携プレイだ。プロデューサー、ディレクター、作曲家、作詩家、アレンジャー、インペグ、ミュージシャン、打ち込み屋さん、エンジニアなどの人達が、それぞれのブレインの中で仕事をするものだ。これが「仕事の輪」と言うものであり、仕事はその中でぐるぐる回っている。だから、どんな形であれ、その輪の中に入ることが先決だ。ぐるぐる回っている輪の外輪にちょっとでも引っかかっていればそこから仕事が入ってくるようになる。輪の外で仕事が来るのを待っていてもまず仕事は来ないだろう。

 では、どうやって仕事の輪の中に入るか。まずプロ・ミュージシャンと仲良くなるといい。プロ・ミュージシャンに教わっている人は先生にかわいがられるようになって、ライブやレコーディングなど先生の演奏の仕事がある時に、「お手伝いさせてください!!」と言って連れていってもらう。仕事先では、先生以外のプロ・ミュージシャンや業界関係者にあったら、相手の名前を覚え、その人達の雑用でもなんでも手伝うようにする。もし、自分の名刺やデモ・テープなどを持っていたら必ず渡そう。その人達のライブ情報を聞きだし、なるべくこまめに顔を出して手伝うようにする。もちろん、聞いている音楽の話しなどを積極的にして、自分が仕事を探している事をアピールする。そして、「いつも来ているあいつ、なかなか使えるな」と思ってもらえるようになったらしめたもの。「だれか若いギターいない?」などと聞かれた時、君の顔を思い出してくれることは間違いない。初めての仕事のギャラがどんなに安くても文句は言わないこと。お試しサービス期間だと思って快くやること。もし、仕事の輪の中に入れるなら演奏の仕事でなくても入ってしまった方がいい。それからチャンスを待ち、自分にギターを弾かせてくれるよう頼めばいい。G-WorksのK君やT君はこの手で仕事をつかんだ。


ミュージシャンの世界と音楽業界とは本来別のものだ。

 ミュージシャンの世界は純粋なものだ。そりゃ、人によってはそうじゃない人もいるかもしれないけど、良いサウンドを夢中になって追い求めていること自体、バカだし、純粋で美しい。だけど、音楽業界は基本的に金儲けの世界だ。基本的にミュージシャンを利用して儲けるのがその本質なのだ。汚いことだってある。決してミュージシャンの幸福を願って動いているわけではない。基本的にこういう認識に立った方がいい。しかし、ミュージシャンだって生きていくのに金がいるのだ。だから、お金になる仕事をしたいと考える。当然、音楽業界で仕事をすることになる。ミュージシャンはこの理想と現実の狭間で悩むのだ。


「歌手がサウンドを変えたい」と言い出す時、バンドには危険が迫っている。

 こういう場合、真っ先に変えようと思うのは、自分のバンドだ。自分の歌い方や作曲法、作詞法、人間性、思想・哲学を向上させるのが筋だと思うが、そうは考えない。まず、現在のバンドを首にして、新しいミュージシャンに変えれば良いと、てっとり早く考えてしまうのだ。決して「これまで苦労を共にしたバンドで新しいサウンドを作っていこう!」とはならないところがミソだ。また、こうした理由でバンドを首にする場合、準備は隠密裏に進められる。バンドには前もって知らされることは無く、突然、首だと言い渡される。ミュージシャンだっていきなり首になったら、生活ができなくなってしまうのは、常識で考えれば分かることなのに、まったく考慮されない。一般社会でこんなことがあったら、労働争議として裁判沙汰かもしれないのに、大抵のミュージシャンは力が無いので諦めて泣き寝入りする。もちろん、首を切る側もそれを分かった上でそうしているのだ。きっと「契約書は交していないし、こういうことがあるからこそ、普段、高いギャラを払っているのだ。」と言うだろう。だとしても、せめて解雇を予告し生活を守るチャンスを与えるべきだし、今まで一生懸命尽くしてくれたミュージシャンに礼を言ってお別れするのが人の道じゃないだろうか?。ミュージシャンを使い捨ての道具のように考える音楽業界のこのような体質は改善したいものだ。


「予算が無い」というのもマネージャーの決まり文句だ。

 このセリフは、ミュージシャンのギャラを値切る時や、バンドを首にする時に使われる決まり文句だ。払う所にはちゃんと払っているものだ。先に述べた通りミュージシャンは立場が弱いのをよ〜く分かった上で、削りやすい所を削っているに過ぎない。たとえ本当に予算が無いとしても、アーティストと苦楽を共にしてきた、言わば戦友を真っ先に切るというのはいかがなものか。ミュージシャンはトカゲのしっぽなのか?


いつもやっている打ち上げが理由もなく行われない時は注意!

 コンサートやライブの後には決まって打ち上げをしていたのに、今回に限って打ち上げがなく、すぐに解散しようなどと言い出したら注意!こういう時は、バンドを首にしようと考えている時だ。


もう分かっている予定をマネージャーが伝えようとしない時、明日は無い!

 バンドを首にする場合、準備は隠密裏に進められる。解雇を予告してくれればまだ良い方で、大抵は、首だとも言い渡さず、次のスケジュールを入れない(依頼しない)という方法が取られる。ミュージシャンは、何かおかしいなと思いながら不安な日々を送り、ある日コンサート情報誌などですでにコンサ=トが行われていることを知り、自分が首になったという事実に直面するのだ。


「来年は海外公演に連れていくから」は期待するな!

 マネージャーが「来年は海外公演っていう話しもあるんだよね。だからさ、今年はなんとか安いギャラでがまんしてやってくれない?」などと言っても、そんなものあてにしない方がいい。来年になったら「ああ、あれ?キャンセルになったんだよね。悪いね。」と言われるのが関の山だ。「旅費は出してあげるからギャラはただにして」なんてことも多い。どうする?これって仕事か?


言いにくくてもギャラの話しを初めにしておくべし

 K君は、知り合いの自称「制作」と言う人に、劇団の音楽を依頼された。K君はバイトの時間を削って何曲も作曲し見事に仕事を成し遂げた。仕事が終わってからK君がギャラが欲しいと言うと、その「制作」は驚いた顔をしてこう言った。「君がそういう事を言い出すとは思わなかった。」K君は今だにギャラをもらっていない。


失敗しても怒られないなら見込みは無い

 リハや本番で失敗しても誰にも怒られないようなら、首になる覚悟をしておいた方がいい。先にも述べたが、音楽業界の人は決してミュージシャンの成長や幸福を願っているわけではない。失敗を叱ったり小言を言うのは成長して欲しいからで、ミュージシャンを育てようと言う気持ちがあるからだ。逆に何も言わずにニコニコしているようなら、もう見放されていると思った方がいい。「ミュージシャンなんていくらでも代わりがいる。駄目なら首にして違うミュージシャンを呼べばいいのだ。」と考えているから、わざわざ注意することはしないものだ。


収入は分散させておくべし

 一人のタレントや歌手のバックバンドをあまり長い間続けているのも考えものだ。良くも悪くもマンネリ化してしまう。安定は良いが、それによりハングリーでなくなる、変化を望まなくなる、いつも演奏する内容しか弾けなくなるなど保守化してしまうのがこわい。また、限られた人としか付き合わなくなって、存在感が薄くなる。そして、先に述べたように、ミュージシャンはいつでも突然首にされるものだ。その時、収入をその一つのバンドだけに頼っていると、首になったとたん生活に困ってしまうことになる。だから、一つ仕事が駄目になっても、他の仕事でカバーできるように、収入の道をいくつかに分散しておくことだ。こうして音楽業界からのひどい仕打ちに対しての対策を立てておこう。


できないことでも断わるな

 もし、仕事を増やしたいと思うなら、仕事の依頼が来た時、できないことであっても「できません」とは言わないことだ。できないと断わった時点で、もうそのラインは切れてしまうと思った方がいい。ただ、できもしないことを「できます」と言ったのでは嘘になってしまうから、そういう時は「やります!」と答えるのだ。「できます」ではなく「やります!」なら嘘にはならない。そうして仕事のチャンスを手に入れたら必死で練習してできるようにしていくことだ。もちろんうまくいく保証は無いが、みすみすチャンスを逃すことはない。勇気を持って当たって砕けろ!必死の人が勝つのだよ。


仕事を断わる時は代わりに友人を紹介するべし

 もし、仕事を依頼されたのに、すでに他の仕事が入っていて断わらざるをえない時は、「私は残念ながらスケジュールが入っていてできませんが、代わりに私の友人を使ってみてもらえませんか?」と言うように友人のミュージシャンを紹介するといい。せっかくのチャンスをみすみす逃すことはない。こうすれば友人に貸しが作れる。逆に、友人に仕事を紹介してもらったら、いつかお返しに仕事を紹介しよう。お互いに仕事を融通しあって、共存共栄を図るのだ。


自分の音楽活動を続けるべし

 誰かのバックバンドの仕事をして、それが相当永く続いてかなり親しくなっていたとしても、いつか突然切られるのがミュージシャンの宿命だ。その時、自分の音楽活動をやってきていないと、一体今まで何をやってきたのだろうと後悔することになる。仕事が忙しくても、バックミュージシャンではなく一人のアーティストとしての自分を作り上げていくことを勧める。
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