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コラム
矢萩 秀明 - コラム10
雲 Photo By H.Yahagi
第8話 - プロってな〜に?  by 矢萩 秀明
 若き後輩のミュージシャンに贈る


プロのステイタスはくずれてしまった

 昔はレコードを出すのは大変なことだった。個人レベルでできる事ではなかったから、レコードを出すにはレコード会社と契約ができなくてはならなかった。それにはプロに成る必要があった。ところが現代では、誰でも機材さえあれば自宅で録音し、自宅でCDを作ることができる。昔は、ライブやコンサートをするのも大変なことだった。ライブをやるからには、それ相当のレベルが必要だった。その演奏力や音楽性が人の批判に耐え得るものでなければならなかった。それにはプロに成る必要があった。それがどうだ、今は昨日初めてギターを握ったばかりの者さえノルマさえ果たせばステージに立てるのだ。その表現は無制限に自由で良いものも悪いものもまったく対等に扱われる。演奏でお金を稼ぎ生活しているのがプロと言う神話は、現代ではもはや通用しない。不況で音楽の仕事、とりわけ生演奏の仕事は激減している。昔は一流の演奏者でなくとも演奏の仕事ができる場がたくさんあった。駆け出しのミュージシャンは、キャバレー、クラブ、ディスコ、ビアガーデン、レストラン、ホテルのラウンジ、バーなどのいわゆるハコバンの仕事をしながら、先輩のミュージシャンにしごかれながらも育ててもらう。そこで仕事を覚えたら次のステップに上がりバックバンドの仕事などを始める。そこで熟練していくとやがてスタジオの仕事ができるようになる。現代では、こうした場が無くなってきている。(一部にはまだ残っているが)スタジオ・ミュージシャンと言えば、昔は録音の仕事だけで生きていたのだが、今の日本にスタジオだけで生きていける人はいないのではないだろうか?皆、何かしら演奏以外の副業をもっているのが現状だろう。あるプロデューサーは、副業をもっているなんてプロとは言えないと言っていた。その人の言葉に従えば、日本にプロなんていないと言ってもいいくらいな状況だ。また、私の友人のあるギタリストは超有名なグループのメンバーで、CDも何枚も出し、コンサート・ツアーもやり、雑誌にも取り上げられているが、いつも金が無いとこぼしている。(彼は本当に困っている)反対に私の知っているある歯医者さんは、一部に根強いファンをもつプログレ・バンドのギタリスト/リーダーで、歯医者で稼いだ豊富な資金をもとに自主制作でインディーズ・アルバムを出し、都内の有名ライブ・ハウスでワンマンのライブをやると言うように悠々と活動している。この人はアマチュア。このような時代にあって、演奏で生活することにこだわる必要があるのだろうか?


プロとアマの違い

 こうしてみると、演奏で稼ぐことにこだわらなくても良いのではないかと思えてくる。つまりプロとアマチュアの定義の上で一番大きな違いである「演奏だけで稼ぐ」ことが難しくなった現代において、もうプロとアマチュアの違いを言うのはナンセンスなのではないだろうか?重要なのはプロとアマチュアの違いではないように思う。たとえば素晴しい音楽性をもつプロ・ミュージシャンが仕事が無くなり演奏以外の副業で生活費を稼ぐようになったらどうなのだろう?この人はプロとは言えないのだろうけれど、音楽を愛し活動を続ける限り音楽家なのではないだろうか?


音楽家は職業か?

 ミュージシャンの世界は純粋なものだ。そして音楽家の歴史をみると大作曲家であっても大抵は貧乏な一生を送っている。世界最高レベルの音楽家であっても経済を優先させた場合、職業としては儲からないのだ。(音楽屋は儲かるかも知れない。)こうなると音楽家を職業としてとらえるのは間違いなのではないか?それは、宗教家を職業ととらえることの間違いに似ているかもしれない。宗教は人間を幸福に導く純粋なものであり、金儲けの手段にしてはならない。(現実にはいかさまな宗教の何と多いことか)


音楽家とは人生の生き方を言う

 私は、音楽家は職業の一種を指すのではなく、人生の生き方を言うのだと考えている。音楽家とは、音楽と言う芸術を通して真理に近づいていく生き方を選んだ人のことだ。そのために自己を磨いていくのだ。その結果として他の人より技術や知識が優れているのは当然のことだ。しかし、それ以上に大切なのはその精神にある。ある若者が、私に老後のことを質問した。だんだん年を取って仕事が無くなっていきますが、老後のことはどうするのですか?私は彼にこう答えた。「老後の事は、一人の人間としてはもちろん考えています。しかし、音楽家としてはまったく考えていません。私もやがて老いていくだろうが、死を迎えるその瞬間まで音楽家をやめるつもりはありません。」いろいろ大変なこともあり、お金も無いけれど、私は音楽家の人生を選んで後悔はしていない。
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