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コラム
第9話 - Scale Out  by 矢萩 秀明
 私が趣味で研究しているスケール・アウトについて発表していこうと思う。こういった内容は、本当は一番書きたい内容なのだが、出版社は出したがらない内容らしく、いっこうに出版の話は無い。とてもマニアックな内容なので仕方がないかもしれない。順不同で書き進め、後で整理しようと思う。説明不足もあるだろうがだんだんと全容が見えてくるだろう。


1.Pivot Noteを軸にしたScale Out
2.音楽における2つの生き方



1.Pivot Noteを軸にしたScale Out

 今、仮に、Em7のバッキングにおいてE Dorian Modeで即興演奏をしていると仮定し、その中でPivot Note(軸音)を軸にしたScale Out(調性離脱)する方法を説明する。

Example-1


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#1.E Dorian Mode(これをInsideとする)の構成音の中から任意の1音をPivot Note(軸音)として設定する。例ではA音を軸に設定した。

Example-2

Example-2

#2.Insideの音群でフレーズを作り、何度か繰り返し、聴衆の耳を慣らす。これを「予告」と言うことにする。この予告はScale Outをより自然で効果的にするためにぜひとも必要な事なので必ずやること。

#3.何度か繰り返し、聴衆が次の繰り返しを予想しているところで、軸音を含む調性外(Outside)のスケールに離脱(Scale Out)する。この時、フレーズの流れが途切れてはならない。軸音を軸にしてスケールをつなぐ事が重要だ。

#4.Outsideのスケールを使ってしばらくフレーズを弾いた後、また軸音に戻った所で、軸音を含むInsideの音のフレーズで解決する。

#5.1小節目が終わった段階では、聴衆はE Dorianの音が来ることを予想している。しかし、ここでBb Major Scaleが演奏されることにより意外性を感じ、強いドミナント・サウンドになる。このドミナント・サウンドをInsideのトニック・サウンドに解決する事により音楽的な起伏を作るのがModeのやり方だ。しかし、A音からBb音へとつながるあたりは、Bb音がE Dorianのb5thのブルー・ノートと同じ音であることもあって不快な感じはしないと思うがどうだろうか?

#6.軸音を軸にしたScale Outはほぼどこへでも行ける。こうした手法は、予備練習としてSame Tonic Modeを練習すると効果的だ。

Example-3

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2.音楽における2つの生き方

Chord System(Major/Minorの調性音楽)とScale System(Mode)におけるSolo

 この世界の音楽は、大きく分けて2つに分けられる。一つはMajor/Minorの調性を持った音楽であり、コードが絶対的な支配力を持っている。もう一つはスケールを基盤にした旋律による音楽で「モード」と呼ばれる音楽だ。この二つの音楽におけるSoloのやり方の違いを考えてみよう。

 人はそれぞれ何らかの団体に所属して生きている。それは1つとは限らず、家庭、学校、会社、サークルなど、一人の人間が色々な面を持って生きている。例えば、家庭にあっては家庭内の規則に従い、学校や会社にあっても、それぞれの規則の中で行動している。たいていの人は、家庭を基盤として、学校や会社、団体などに所属して、それぞれの場所でそれぞれの顔を持つ多面的な生活を送っている。その人の持つ自由は、その時に所属している団体の規則の中での自由である。その規則から逸脱すると「アウトロー」と呼ばれる。

 このような生き方は、Chord System(Major/Minorの調性音楽)におけるSoloと酷似している。「生活の基盤となる家庭」が、調号に示されるその曲のKeyである。それ以外の「学校、会社、サークルなどの団体」は、一時的な部分転調にあたる。家庭の中だけで生活している人の生活は、転調のない単純な音楽に似ている。人は成長と共に活動の範囲を拡げ、社会における色々な関係性の中に豊かな人生を築いていくものだ。各団体の中で役職などの他の人との位置関係によって緊張感(テンション)が生み出されてゆく。しかし、あまりに各団体との関係性にしばられた生き方は、自分の個性や意志を埋没させてしまいかねない。自分の興が乗ったからといって、規則から逸脱する行動があれば激しく非難される。例えば、会社が終わった後の時間にバンド活動をするのは自由だし、バンドをやっている時に髪を染めてド派手な衣装を着ているのも自由だ。しかし、この自由はあくまでもその場に応じた自由であり、その時に所属する団体の規則の中での自由にすぎない。もし、会社でそのような格好をしていたら非難されるだろう。

 反対に、そのような規則に縛られずに自然に振る舞えたらどうだろう?自然な意志の流れのままに、つくろわずに自由に行動する。それでいて、それはそうする必然性を伴っていて、そうすることが少しも不自然ではなく、不快感を生まない。仕事をしている最中でも自然の美しさを見逃さない感性を持ち、真剣の中にもユーモアがあり、日常の中に永遠を見い出し、ある時はダイナミックに、何ものも恐れず、ある時は繊細に人情の機微を感じ、あるがままに振る舞えたらどうだろう?これは勝手に行動する事とは違う。その時その時に所属する団体の狭い規則からはみ出すことはあっても、また一見めちゃめちゃなように見えても、その行動は一つの確かな哲学に貫かれ、決して人間としての調和を失ってはいない。

これがモード音楽だ。「行動を貫いている確かな哲学」とは、基調になるモードのことであり、トーナルセンターである。フレーズの流れは前後の脈絡を崩すことなく、その意志に従って、調の支配やコードの支配に縛られることもなく、弾きたいメロディー(フレーズ)を弾く。もちろん、その場の規則から外れることにより(Scale Out)、緊張感を生じるが、それを使ってかえって人生(音楽)をより面白いものにしていくのだ。

 『ある場面では、ホリゾンタル(水平方向の)な力(つまりメロディー)は、バーチカル(縦方向の)な力(つまりコード)より強い。』このことを覚えておいてほしい。

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