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コラム
第13話 音楽の喜び〜作曲技法講座を受けて〜  by 矢萩 秀明


現在G-Worksで作曲講座を開講している三枝俊治先生は、もともと私の友人である。
彼は、腕のいいベーシストで、渡辺真知子さんのバンドで一緒だった。

その彼が突然バンドをやめて、2001年、アメリカ・ボストンのバークリー音楽大学に留学してしまった。彼にとっては以前から考えていたことらしいが、周囲の人間にとっては突然のことで「30歳過ぎてからなぜ?」とおおいに驚いたものだった。

彼はバークリー音楽大学においてアコースティックベースを、ロン・マクディ、ポール・デル・ネロ、ブルース・ガーツ各氏に師事。また、リチャード・ロウェル氏にジャズ作曲技法を師事。2004年12月、同校ジャズ作曲科プロフェッショナルディプロマをなんと!首席で卒業して帰国した。

私は帰国した彼に会い、いろいろ話を聞く中で、彼に師事して作曲技法を学ぶことを思い立った。
19歳でプロになってから30年以上が過ぎ、20歳の頃よりはずいぶんたくさんの事を知っているようになったが、音楽を知れば知るほどその奥深さに気づき、知りたい事が山のように出て来る。学びたい。
しかし、私はもう50歳を過ぎ、家庭も仕事も放り出して留学することはできない。またその費用も無い。
しかし、今自分の目の前に自分にとって未知の方法を知っている人がいるのだ!すぐさま彼に相談したところ快く承諾してくれた。こうして私は彼の最初の弟子になった。

ここからは三枝先生と呼ぼう。私の作曲の師匠だから。先生の講座は初級、中級、上級、アドヴァンスド・クラスとに分かれていて、実力に合わせたクラスから始めることができる。私はいきなり上級クラスで始めていただいた。

先生が作ってきたプリントをいただいて作曲技法を学ぶ。生徒は次のレッスンまでにその技法を使って曲を作って来る。譜面にして録音した音源を提出する。すると先生がそれに対してコメントやアドバイスをする。こうしてどんどん進んで行く。

思いつくハーモニーと思いもよらないハーモニー、モーダル・インターチェンジ、コンスタント・ストラクチャー、アッパー・ストラクチャー、モティビック・デベロップメント、ディレクショナル・ライン、モーダル・カラー・コーディネイトなど、毎回が未知の知識に出会う興奮と喜びで心が躍った。

こうした未知の知識の習得も楽しかったが、さらに興味深いのがスタンダード曲のアナライズだった。
先生に教わった方法でスタンダード曲のコード進行やメロディーを分析して、その曲がどのような技法によって作られているのかを解き明かす。

モードによって作曲された「ナイマ」に隠された秘密。音楽雑誌の講座で「ナイマ」を分析しコードに対してメロディーがテンションになるようにしているのだとの解説を読んだことがあるが、そんな浅いことではなかった。メロディーや小節に従って変化して行くモードの小宇宙。それらがバラバラになるのを防ぎ、一つのまとまった音世界としての秩序を与えているメロディー。モードの変化に伴い鮮やかに変化する色彩。この曲の謎めいた美しさは宇宙の神秘のようだ。

「What's New?」のもう一つの顔。
一般的にはメジャーの曲の中で借用によってコード進行を複雑にしているとアナライズされるのだが、メロディーを注意深く分析し、あることに気づくと別の世界のドアが開くのだ。果たしてこの曲は本当にメジャーなのか?いたる所にしかけられた仕掛けにあなたは気づくだろうか?
名曲は偶然生まれたのではない。名曲になるべくしてなったのだ。

曲のタイトルはその曲のテーマを示し、その曲の謎を解き明かすヒントが隠されていることがある。
「Misty」もそうした曲の一つだ。
曲名が示すテーマとメロディーやコード付けの関係性を注意深く探っていくと作者の作曲の手順やなぜその音でなければならなかったか?なぜそのコード付けでなければならなかったか?
作曲者が作曲を進めて行く様子を目の前で見せてもらっているようなリアリティーで迫って来る。

まさに宝探しの謎解きのような興奮と楽しさがあった。ただ、仕事をしながら1週間で作曲するのは大変だった。習った技法の復習をし、作曲の準備に取りかかる。必要なリストを書き出し、技法に従ってメロディーやコード付けを作っていく。譜面を書き、録音して完成させる。仕事が終わった深夜にこうした作業を少しずつ進めて行く。寝不足が続き体はきつかったが毎日が喜びに包まれた。


こうして私は三枝先生の講義によって多くの新しい知識と喜びを得たのだった。
しかし、私の音楽についての謎はなくなったわけではない。新しい音楽の次元に立ち、ますます音楽の不思議と謎に気づき、その奥深さを感じる。
こうして学ぶ中で様々な音楽の素晴らしさを感じたが、音楽の素晴らしさは実は「人間」の素晴らしさなのだ。真の音楽家は音楽を通してこの宇宙の真理に近づこうとする者なのだと思う。
最後に三枝俊治先生に深い感謝を捧げます。


2007年1月11日
矢萩秀


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