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コラム
第17話 実際のところミュージシャンって喰えるんですか?  by 矢萩 秀明


「実際のところミュージシャンって喰えるんですか?」

音楽を学ぼうとする若者がこう質問した。
儲けようと思ってミュージシャンになろうと思ったのなら
この若者はビジネスのセンスは0だと言っていいだろう。
週間エコノミスト2008年7月29日号の「音楽がタダになる」と言うショッキングなタイトルの特集記事があった。
その中に坂本龍一氏(ミュージシャン)の「いま18歳だったら音楽家にならなかったかもしれない」と言うインタビュー記事が掲載されている。

氏は次のようにコメントしている。

「音楽家は作品を聴衆に買ってもらい、ようやく食べていける。無料でコピーされる音楽が増え、音楽界に流入してくる資金が減れば、優秀な才能・人材が集まらなくなるという問題がある。将来的には、才能が他分野へ流出し、産業としての音楽が消滅するかもしれないと危惧している。」(週間エコノミスト2008年7月29日号より引用)

今、デジタル技術やコンピュータの発達は音楽の作り方を大きく変えている。
大手スタジオでの録音は減少しその多くはミュージシャンの個人スタジオに移っている。
個人スタジオと言えば聞こえがいいがパソコンによる自宅録音と言うことだ。
当然、正規のギャラは支払われず足元を見られてギャラは下がり続けている。
こんな録音ばかりやっていてもたいした収入にはならない。
CDは売れずライブやコンサートにも客が入らない。
だからミュージシャンの仕事は減る一方だ。
こうした現代の音楽状況を見れば誰でもこう結論するだろう。

「音楽では喰えない」

しかし、こうした話題を聞く時、いつも決まって思い出す話が二つある。

一つはMJQのリーダーでピアニストのジョン・ルイスが主催して開かれたあるジャズ・サマースクールでの話だ。


日程を終えて参加者の技量も向上しその日はジョン・ルイスがサマースクールを総括する話をしている時だった。
数人の若者たちが不遜な態度でこう発言した。

「実際のところ仕事にありつけるんですか?」「何か見返りがあるんですか?」「昼間アルバイトをしなくても十分やっていけるくらいには、ジャズで稼げるんですか?」

ジョン・ルイスはしばらく忍耐強く耳を傾けていたが、やがて少々芝居がかった様子でこう言ったという。

「それは話があべこべじゃないかね?ジャズを演奏できるようになったこと自体が何者にも代え難い君の財産である筈だ。これ以上のものが他にあると思うかね?」(趣意)

まさにその通りだと思う。
儲かるから音楽をやっているわけじゃない。
好きだから、やりたいから、聴いてほしいからやるんだ。
少しでもいい演奏をしたいから学び練習するんだ。
ちょっとでも良い音楽を作りたいから学び努力するんだ。
いい音楽を提供しそのご褒美にお金がついてきたんだ。
僕はギターを上手に弾くことができる。聴く人が感動するような曲を作曲することも、誰かの曲を編曲することもできる。こうした音楽の才能や技術や知識自体が僕の宝物であり、喜びなんだ!!
僕はそう思う。


二つ目の話は友人のピアニスト/作曲家小川洋氏から聞いた話だ。

小川洋氏はプロとしてジャズを始めたばかりのある日、ある先輩ミュージシャンと話をしていた。
「最近どうだい?」と先輩ミュージシャンに尋ねられた小川洋氏はこう答えた。
「あまりぱっとしませんよ、やっぱりジャズは喰えませんね。」

するとその先輩ミュージシャンは諭すようにこう言ったと言う。

「喰えないのはジャズじゃなくて君だろう!」

小川洋氏はこの言葉に衝撃を受けたと言う。

確かにそうだと思う。
不景気で仕事が無いと言ってもばりばり仕事をしているミュージシャンもいるのも事実だ。
人のせい、時代のせいにするのは止めようと思う。

音楽が商売にならなくなっても音楽そのものはなくならない。

音楽は無料で手に入り使い捨てされる時代になって来た。
音楽の価値は下がり続けている。
だからこそ僕は音楽家として価値ある音楽の創造を目指していこうと思う。

AMANDORA!

坂本龍一氏のインタビュー
http://www.phileweb.com/interview/article/200908/31/25.html

小川洋 ムジカデザイン
http://www.musicadesign.com/


2008年8月16日
矢萩秀明


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