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コラム
第20話 セッションの作法  by 矢萩 秀明

セッションの作法

各地で行われているライブハウスのセッションを見ると本当の意味でのセッションになっていないことが多い。

誰かがKeyと簡単なコード進行を決め、テンポとビートを出してやってセッションがスタートする。
セッションの中で演奏者はアイデアを出し仕掛けていく。誰かがアイデアを音で提示したら、それに応えて演奏する。各楽器のアイデアが出揃って音楽になったら、また誰かが新しいアイデアを提示する。するとまた各楽器がそれに応え新しい音楽が生まれる。こうして次々にアイデアが提示され、その度に音楽が変化していく。これはずっと演奏しながらのことだ。演奏を止めて打合せをするわけではない。
当然、即興で行われる。

あまり複雑なコード進行だと自由さが失われるので簡単なコード進行が良い。たいていは1コードか2コードで充分だ。
例えばE7の1コードでセッションを始めたとする。ビートはFunkだ。
こうした場合、仕掛けるアイデアとしてはリズムのアイデアが最も一般的だ。なるべく分かりやすくかつカッコいいパターンを提示しよう。初めから用意がなくていい。ドラムやベースのグルーヴを聴きながらしばらく弾いているうちに何かキャッチーなパターンが浮かぶかもしれない。
例えば次のようなパターンを思いついた。(譜例-1)

しかし、これでは駄目だ。他のプLレイヤーが入り込むスペースが無い。
一人ですべてを埋めてしまってはいけない。例えば次のように相手が演奏するスペースを空けておくのがコツだ。(譜例-2)


このように演奏すれば2小節目の空いている所に誰かが何かを入れたくなることは確実だ。
こうしたアイデアは、他のプレイヤーとのコール&レスポンスとなる。音の会話だ。
次の例は16分音符4個と8分休符1個で1グループとしたポリリズムの2小節パターンだ。(譜例-3)


こうしたパターンを8小節単位の中の7〜8小節目に提示すれば、恐らくドラムやベースはユニゾンして来るだろう。
こうしたアイデアを仕掛ける時には各楽器のプレイヤーとのアイコンタクトも忘れてはならない。
こうした時に便利なのが次のパターンだ。
付点8分音符を2小節の間に8回繰り返したポリリズムのパターン。(譜例-4)


このバリエーションが次のパターン。上のパターンを8分休符1個分遅らせて始めたポリリズム・パターンだ。(譜例-5)


こうしたリズムの変化は基本的に同じビートの上での変化だが、ビートそのものを変化させても良い。Funkビートなら倍テンポの4ビートにするのがよく使われる手だ。


アイデアはリズムばかりではない。
コード進行のバリエーションを使って変化をつけるのも面白い。
例えばE9をミクソリディアン・モードやドリアン・モードとして捉え、4thビルド・コードでモーダルにバッキングするのも良い。
コードのバリエーションの例を示す。

さらに転調も使える。
全体を短3度上または下に転調するのはよくある手だ。この場合、アイコンタクトをしながらベース・ラインを半音で動かしつつ目的のKeyに導かなくてはならないので難しい。

さらにブレークを入れるテクニック。
次のセクションの頭で全員の音量を突然小さくするテクニック。
回数を決めないソロ廻しで、ソロを止めて次の人に渡すテクニック。
同様に次のコーラスもソロを続けると言う意思表示のテクニックなどなど・・。
回数を決めた繰り返しでソロをしている人に最期の回を知らせるテクニック。
盛り上げて行く伴奏の仕方と逆にだんだん盛り下げる方法。
リズムを見失っている人に分かりやすく伝える方法。

私が20代前後の頃は世代の縦のつながりがけっこうあったのだ。よく先輩のプロ・ミュージシャン達とセッションをした。先輩ミュージシャン達は、こうしたことを確実にカッコよく決めていた。その中で一緒に演奏することで私はこうしたやり方を学ぶことができた。先輩のベテラン・ミュージシャンが若手を育て引き上げて行く。それが伝統だった。
しかし、現代の若手ミュージシャン達の間では同世代だけで固まろうとする傾向が強いようだ。
こうした良き伝統は無くなろうとしている。

さて、セッションではこうしたアイデアを参加した各人が出し合う。だから他人が出したアイデアを即座に聞き取る能力も必要になる。
演奏力、知識、耳の良さ、アイデアの豊富さ、リズムに対する柔軟性、パフォーマンス力、発想力、記憶力、意思の強さ、判断力、情熱やパワー。
まさにそのミュージシャンの能力すべてが試されるようなものだ。
だからこうしたセッションをしてみれば相手がどんなミュージシャンだか分かるわけだ。
そして気に入った者同士が集まりバンドが誕生する。

このようにセッションは腕自慢の場ではなく、音楽でのコミュニケイション、音の会話であることを忘れずにたくさんセッションをしてほしい。

矢萩秀明

2009年9月13日

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