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コラム
第28話 指の構造 by 矢萩 秀明

 皮膚の表面は角質層で覆われています。
表皮を構成する細胞は、角化細胞が分裂して生まれます。細胞は有棘層から顆粒層へ、更に淡名層から角質層へと2週間かけて上層へ移動し、角質層で核がなくなり細胞は死にます。
角質は、2週間ほどでアカになってはがれ落ちます。
こうして指の角質が常に新しくなることで私たちの指はギターの弦やネックとの摩擦に耐えることができるのです。
弦を押さえる指先は初めは柔らかいですが、演奏を続けている内に段々と指先の皮膚が硬くなってきます。これは、圧迫や摩擦刺激に対する皮膚の防御反応です。
特定の部分に圧力がかかり、皮膚が刺激されると角質が増殖し、厚く硬くなった状態になります。これが指先の「たこ」です。たこができると弦を押さえるのが楽になります。
一時的に硬くなった指先の角質も2週間ほどで剥がれ落ちます。
場合によっては指先の皮膚がふやけたようになって破れることがあります。
こうした時には、無理に剥がさないようにしましょう。

指腹部(指の腹)は、ふっくらしていて柔らかいですが、この部分には筋肉はありません。
角質の下には表皮があり、さらにその下に真皮があります。
真皮は、コラーゲンなどの膠原線維とエラスチンなどの弾性線維が網状に交差していて、その隙間にヒアルロン酸などのゼリー状の保湿成分と水分が満たされています。
更にその奥の真皮と指の骨の間にあるのが皮下組織です。皮下組織はほとんどが脂肪細胞で、栄養貯蔵や体温保持の役目を果たしています。
これらがクッションとなってギター演奏の外的な衝撃を吸収して骨や腱を守ってくれているのです。
また、指腹部がふっくらしていて柔らかいお陰で弦をしっかり押さえることができますし、弦をミュートしようとする時もミュートが効くのは柔らかい指腹部がが弦を包み込むからです。
ネックのロー・ポジションを押さえた時に、ネックに対して腕が斜めの交差している人は、硬い指の側面で弦を押さえることになるので、押さえもミュートも甘くなります。

また、指には固まりやすい関節部が多い為、指を使わないでいると1週間ほどで動きが鈍くなってきます。
加齢に伴い、関節部の代謝は段々と悪くなるので、永くその機能を保持するためには、適切な指のエクササイズが大切です。指のマッサージも効果があります。

指には関節が多く複雑な動きをすることができますが、同じ動作を持続したり、力を入れる動きには決して強くはありません。
加齢に伴って関節が痛むことがありますが、若いからと言って安心はできません。軟骨摩耗、運動不足による筋力低下、肥満、そして血行不良などが関節痛の原因になります。
指に起きる主な障害には、関節の機能を無視した動きによって引き起こされる脱臼、無理な動きによる靭帯損傷、関節の耐久能を超えての酷使による関節炎などがあります。
指には関節が多い為、外的な衝撃は関節に吸収されてしまいます。その為、指自体の骨折は比較的少ないのですが、突き指などによって、指の靭帯損傷のみならず、指の掌に隠された部位の骨折を引き起こしていることがあります。
また、外傷がなくとも重量物による圧迫が骨折を引き起こしていることもあるので、曲げることが可能でも痛みを伴う場合は医師の診察を受けましょう。

一般的には、関節痛を経験する人が多いと思います。
指を酷使することで関節の軟骨をすり減らしてしまうことがあります。これが関節痛の原因になります。
軟骨は、骨と骨とが直接ぶつかって摩擦が起こるのを防ぐ保護膜の役目を果たしたり、骨にかかる衝撃を和らげる役割をしています。軟骨の主成分はプロテインで、血管や神経が通っていません。
関節全体は、関節包という膜で覆われていて、膜の内側は・関節液で満たされています。ヌルヌルとしたこの液体も、関節を滑らかに動かすために必要なものです。
血管が通っていない関節軟骨が新陳代謝できるのは、関節を曲げ伸ばしした時に関節液中に老廃物質を排泄し、それと引きかえに関節液から栄養を取り込んでいるからです。その為、血行不良が関節痛の原因になることがあります。軟骨に必要な栄養分は血液によって運ばれて、関節内の関節液を通して行き渡ります。血行が悪くなって栄養分が運ばれなくなると、軟骨の補修が適切に行なわれなくなってしまいます。
関節液が軟骨組織に十分にしみ込んでいると、軟骨は柔らかく弾力性をもって、クッションのように働きます。 しかし、軟骨が摩耗してくると、表面がデコボコになり、一部が欠けたりします。軟骨の弾力性が失なわれると、骨へ直接負担がかかるので、動いた時に痛みや違和感を感じるようになります。
加齢に伴って軟骨は磨り減って行きますので、軟骨の維持に効果的なのがグルコサミンやコンドロイチンです。
これらの成分が一時的に軟骨の代わりのような役割を果たしてくれることで関節の痛みをやわらげてくれる効果があります。
サプリメントを摂るのもよいと思いますが、適切な運動を続けることで筋力を維持することと、食事の栄養バランスに注意することが大切です。

以前、左手の親指の付け根の関節を痛めたことがありました。
左手の親指はグリップをする大事な指です。コードを弾くにも、メロディを弾くにも親指無しには演奏できません。手に何か故障がある時は手を使わないのが一番良いのですが、その時期にコンサートの仕事があり、どうしても演奏にしなければならない状況でした。湿布をして更に親指サポーターで保護しながら演奏しました。
演奏に集中すると親指の故障を忘れてつい力が入ります。演奏内容によっては親指がズキンと痛みます。
痛みがあると故障のことを思い出して、なるべく親指に負担をかけないように注意しながら演奏しました。
演奏が終わってみると、今までなんともなかった部分が痛くなってしまいました。幸いそちらは軽いものでしたので、すぐに治りました。
手のどこかに故障があるとそれをかばおうとして緊張し、手がこわばってしまいます。普段とは違う力んだ演奏になっていたのでしょう。その結果、故障の無かった部分の負担が大きくなったのです。
演奏と言うものはこうしたバランスの上に成り立っているのだと思います。
どこかに故障があるとそのバランス全体が狂ってしまうものなのです。

指や手が痛い時には、素人判断はせずに、早めに専門医の診察を受けましょう。関節の痛みなどは、整形外科を受診するのが一般的ですが、手や指に限っては手の専門医への受診を強く薦めます。
専門医の指導の下で、激しい痛みでなければ、できるだけ普通の日常生活を送るように心がけることが大事です。痛いからと言って動かさないでいると、筋肉も弱くなってしまい、関節への負担を更に大きくしてしまいます。
演奏のフォームやテクニックを見直すのはもちろんのことですが、日常生活、とりわけ食生活に気をつけて肥満を防ぐことと軽い運動で筋肉を鍛えることが大切です。肥満や運動不足は、生活習慣病の原因にもなり、動脈硬化や血行悪化を引き起こして、関節の状態を悪化させることにつながるからです。

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