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コラム
第35話 バンド・アンサンブルについてBass編 by 矢萩 秀明

 ベースは、その名の通りドラムの女房役として、協調してアンサンブルの土台になる楽器です。
ドラムは、打点を出すことはできますが、長さを表現することはできません。
そこで、ベースはキックに長さを与え、その長短の操作により、グルーブを強めたり、弱めたりするのです。
「R&Bの8分(音符)」を思い出してください。
古典的なR&Bの基本パターンでは、1拍目の頭の8分音符は弱く短く弾き、1拍目裏の8分音符はテヌートで弾きます。
これをドラマーがキックで表現しようとする時、強弱は表現できても、長さの違いは充分には表現できません。しかし、ベースならこれを表現することができます。
また、バック・ビートの打点の部分の音を休符にしたり、逆にアタックのノイズを入れることによってスネアを強調することもできます。
こうしてベースはドラムと協調して一つのグルーブを生み出していくのです。

また、和声的には、ベースは、和音の基本型、展開型、代理コード、ペダル・ポイント、対位法的ライン、クリシェ・ライン、オスティナートなどを駆使して和声進行の意味を決定づけます。
ドラムはリズムとダイナミクスを支配できますが、ベースは、グルーブと和声進行を支配できるのが強味です。
こうした意味から、リズム・セクションの花形はドラムですが、影で実権を握っているのはベースだと言っていいでしょう。

しかし、ソロ志向のベーシストは、こうしたベースの持つ重要な役目を放棄して、音楽的にも、音域的にもベースの領域を逸脱して、フィルやソロ、コード・バッキングに終始する傾向が強いようです。
バンドと音楽のベースメントを支え、グルーブと和声進行を支配する役目はベースにしか出来ないと言うのに、なぜ上物(うわもの)になりたがるのでしょうか?
そのようなプレイをお望みならギタリストになればよいのにと思います。

さて、ギターとベースとのアンサンブルを考えた場合、重要なのは音域です。
ギターの低音域は「ハーフ・ベース」と呼ばれるようにベースの音域に食い込んでいます。
特に、スタック・アンプなどの大型アンプを使った場合、より低域が増強されます。
Heavy metalのような低音域を重視する音楽スタイルなら別ですが、一般的なPOPSでは、ギターの低音域があまり分厚いとベースの聴こえ方を阻害してしまいます。
レコーディングでもライブのPAでも、エンジニアは各楽器が明瞭に聴こえて、更にバランスを取りやすくするために、その楽器の必要な音域を残し、他の楽器に被る部分の音域はカットするのが普通です。
ギタリストはこうしたことも考慮してサウンドを作っていくのがよいのです。
当然、アンプのスピーカーの大きさや数や構造もこうしたことに大きく影響するので研究して欲しいところです。

基本的なリズム・パターンやリフをユニゾンする場合、ベースのアーティキュレーションを注意深く聴き取り、合わせるようにします。
ベースが対位法的なラインを弾いている場合、ギターの弾くべきトップ・ラインは対位法のメロディ・ラインとベース・ラインの考え方を応用します。即ち、「並進行(Similar Motion)」と「反進行(Contrary Motion)」、そして「斜進行(Oblique Motion)」及び「ペダル・ポイント」の四つです。
「並進行」とは、メロディとベース・ラインが同じ向きに進行し、前後の音程が異なることを指します。特に、同じ音程を保ちながら並進行することを、「平行進行(Parallel Motion)」と呼びます。平行5度や平行l8度の平行進行はクラシックでは、禁止されていますが、ポピュラー音楽では逆に多用されています。
「反進行」は、メロディとベース・ラインが反対方向に進行することを指します。
「斜進行」は、メロディが同じ音程で、動かない時に、ベース・ラインが上または下向きに動くことです。あるいは逆に、ベース・ラインが動かないで、メロディが上または下向きに動くことを指します。
「ペダル・ポイント」とは、メロディの動きとは関係なく、ベース・ラインが動かないで一定の音を保つことを指します。
ほとんどの場合、コード進行を構成するコードのルート音とは関係なく、その調のトニック音かドミナント音を使います。
こうした動きを組み合わせてサウンド空間の大きさなどを変化させていくわけです。
ギタリストがこうした知識を持っていれば、ベース・ラインに対して、より効果的なバッキングができるでしょう。
例えば、あまり長く並進行や平行進行が続くとサウンドは単調になてしまう。そこで、ギタリストは、適度に反進行やペダル・ポイント的な動きを入れて変化を付けるようにするのです。
また、下降していくベース・ラインは、大変よく使われますが、ギタリストはこれに対して、反進行や斜進行になるようにコードのトップ・ラインを工夫するようにします。
これを心がければサウンド空間を上手に演出できるでしょう。

3rd音をベースにする転回形の時には、ギターはなるべく3rdを重複しないようにするのがよいのです。使っていけないというわけではありませんが、強調しないようにすることです。

また、ベース・ラインの定石を知っていれば、ユニゾンするにしても反進行するにしても、先回りして用意することができます。例えば、ジャズやブルースでよく使われるベース・ラインなどが解り易いでしょう。
もっと地味な例もあります。例えば、Cメジャー・キイでG7がEm7へ偽終止するような場合です。
この場合、ベースは4拍目辺りにF音を経過させてEm7につなぐのが定石です。譜面にそうした指示が書かれていなくても、経験豊富なベーシストなら迷わずそうするでしょう。
こうした知識があれば、ギタリストはそのベース・ラインに対して最も効果的なトップ・ラインを選ぶことができるでしょう。

ベースが中心となるグルーブのパターンを弾いている時、ギターはそれに対してどのようなリズム・パターンを弾いたらよいのでしょうか?
簡単に言えば、強調するか、合いの手を入れるか、足りないものを付け足すかです。
ベースが動いている場所では、ギターはあまり動かず、逆にベースの動きのない部分ではギターの動きを入れるようにします。常にCall&Responseを心がけて、初めから対句になっていたのでは?と思えるようなバッキングを目指すことが大切です。

ただし、アンサンブルの中でギターは上物(うわもの)としての役割も大きいので、つねにリズムのことばかり考えているわけではありません。
効果音的なサウンドでムードを演出する側に回ることもありますし、敢えてインテンポではなく、溜めて弾くことも多いのです。
ギタリストは、ドラム&ベースのリズム・セクションに対して、ノリ的にはニュートラルな感覚で、自由にイン・テンポにも溜めにも対応できる柔軟さが必要です。

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