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コラム
第37話 バンド・アンサンブルについて 歌手編 by 矢萩 秀明

 私は多くの素晴らしい歌手と仕事をして来ました。
よい歌手は、まるで役者のようだ、これから歌おうとする曲の世界観に関係する内容のTalkがあり、聴衆と自分自身を次第にその世界に引き込んで行きます。
曲名を伝え、歌い出す時には、もう主人公の顔になっているものです。
伴奏をするミュージシャンも、前ふりのTalkを聞きながら歌手と一緒にその世界観の中に染まっていく事が必要です。
ドラマーなら曲のムードに見合った声のトーンでカウントを出すでしょう。
ギタリストも、曲の雰囲気に見合ったトーンやタッチで演奏しましょう。
たとえ譜面を見ながら演奏するにしても、歌を聴きながら、歌手と同じ気持ちになるように心がけることです。
歌の合間にFillを入れる場合、歌の無い瞬間や声が伸びている隙間などの、所謂、「デット・スポット」を狙って入れるのですが、その時には考えてはいけません。Fillを入れるにタイミングにしても、音選びにしても、考えるのではなく、「感じる」ようにするのです。
できればメロディ・ラインの音に対して、ユニゾンは避け、3度か6度音程になるのが良いのですが、それも理論的に考えるのではなく、瞬時に耳で判断して演奏するのが理想です。
歌に対してオブリガートを弾く場合には、直近の歌詞を考慮して、歌詞の内容に合わせてイン・テンポでさらっと弾くのか、溜めて弾くのか、元気よく弾くのか、しょんぼり弾くのかなどを変えていきます。
ただ、オブリではなく、コード・バッキングなどをしている場合には、歌が溜めたからといってむやみに合わせない方がよいのです。イン・テンポのバッキングがあるからこそ歌手の「溜め」が活きるからです。

譜面上、繰り返し記号で書かれているからといって、同じ演奏内容を繰り返してはいけません。
仮に、書き譜でまったく同じ内容を弾くとしても、タッチを変えたり、装飾の仕方を変えたりして変化をつけることが大切です。
もし、それも不可能なら自分の気持ちを変えればよいのです。
そして、1曲中には一箇所だけクライマックスを設定して、歌手の歌と共に、そこへ向かって演奏を組み立てることが大切です。
そして、そこで歌手と共に勝負を掛けます。
聴衆と歌手、そして演奏者が共に感動を共有できた時の喜びはミュージシャンの醍醐味です。

私は、歌手の伴奏をする時には、その歌手に惚れ込んで演奏しています。
いつも歌手の後ろに控え、歌手の背中を見ながら演奏しています。
恋人に愛情を注ぐように、身を捧げるように。
だからその歌手のバンドを去る時には本当に悲しい気持ちになります。
そうやって、もう40年以上も歌伴をやってきました。
うまい歌手との出会いはギタリストにとって幸せなことだと思います。

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