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コラム
第53話 マイルス・デイビス by 矢萩 秀明

 研究科のレッスンで、受講生の希望もあってマイルス・デイビスの「So What」を取り上げることになりました。
そこで、昨年末からドリアン・モードでの即興演奏について研究をまとめていました。
その過程で、この曲を演奏しているアーティストのYouTube映像を視聴して、比較研究しました。
その中で、最も強く印象に残ったのは作曲者であるマイルスの演奏でした。
私はジャズ・ミュージシャンではないので、マイルスに対する批評などおこがましいことですが、マイルスについて調べていくうちに更に興味深い文章に出会ったのです。

 ジャズ・トランペッターとしての技術的な評価としては、マイルスはあまり上手とは言えなかったと言うのです。
マイルスと同時代のトランペッター達、ディジー・ガレスピー、クリフォード・ブラウン、フレディー・ハバード、ケニー・ドーハム、ブルー・ミッチェル、リー・モーガンなどは技術的にはマイルスよりもずっと上だったそうです。
マイルス自身、ディジー・ガレスピーと一緒にチャーリー・パーカーのバンドにいた時から、どう頑張ってもガレスピーのようには吹けないことでコンプレックスを持っていたそうですから驚きです。「一体、どうやったらガレスピーのように吹けるのだろう?」とマイルスは悩んでいたそうです。

 これには驚きました。
あのジャズの帝王のようなマイルスにそんな時代や一面があったなんて!
このマイルスの想いには、私は大いに共感できます。世の中にはギターの上手な人がいっぱいいて、私も常々同じようなコンプレックスを感じているからです。

そのマイルスが、どうやってそのコンプレックスを克服し、更に自分のスタイルを確立して行ったのでしょう?大いに興味が湧いて来ました。

 ガレスピーに追いつけ!追い越せ!とばかりにがむしゃらに練習したのだでしょうか?
私ならそうするところですが、マイルスは違いました。

 マイルスは、ガレスピーのような派手な演奏には見切りをつけて、独自の道を歩み始めたのです。
それは、「沈黙」でした。

 ビ・バップの創始者として有名なサックス奏者のチャーリー・パーカーのアドリブ・ソロは、超絶技巧を駆使して、とてつもなく沢山の音を鳥のように素早く演奏する華々しいものでした。
それと対照的に、マイルスのソロは、音数の少ない間を活かしたソロで、沈黙の中で凝縮されたパワーをぎりぎりまで溜め、必要最低限の音数で表現するようなスタイルでした。
そのため、パーカーは、テクニシャンのガレスピーより、マイルスを自分の共演者に選ぶ事が多かったそうです。
両雄並び立たずと言ったところでしょうか。

そして、やがてマイルスがリーダーとしてバンドを組むと、かつてパーカーがマイルスをそう扱ったように、マイルスは自分の演奏を引き立てるべく、自分のの周りにキャノンボール・アダレイやジョン・コルトレーンのように音数の多いテクニシャンのサックス奏者達を配したそうです。

更に、ジャズの演奏と言うと、バンドの各人の個人的名人芸の同時進行といった捉え方もできますが、マイルスはそこに個人の名人芸を超えたバンドのトータル・サウンドを聴かせると言う新しい概念をもたらしたと言います。

 マイルスは、自分がソロを取っている時のセロニアス・モンクのバッキングが気に入らず、自分が吹いている時には弾くのを止めるようにとモンクに文句を言って、喧嘩になったというエピソードがあると言うのだから驚きます。

 また、マイルスは、自分が吹くことで、あるいは吹かないことで、バンドのリズム隊を刺激して彼等の反応を上手に引き出す天才だったそうです。
そのことによって、基本的に個人主義のジャズに、対話的ななアンサンブルという概念を持ち込んだのです。
その他にも、マイルスの魅力や特徴はたくさんあるようです。
私は、超絶技巧を持たなかったマイルスが、技術ではない面で自分のスタイルを確立した事を知り、驚きとともに大いに共感し、勇気を得た思いがします。
勿論、私とマイルスでは、才能が違いすぎるので、同次元では考えられないことは重々承知していますが、私にとっては大きなヒントを頂いたのだと思うのです。
引用元
http://www.youtube.com/watch?v=NzyV8kb2_2Y&sns=em

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