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Q&A
<Q42> ミュージシャンって具体的にはどんな仕事?
Nさん (2002/11/28)
 矢萩さんは、ミュージシャンという仕事に就いて何年くらい経つんですか?私も将来ミュージシャンになりたいと思ってるんです!それで、ミュージシャンって具体的にはどんな事をしてるんですか?私の中では、テレビ出たり、ライブやったり、曲つくったりっていうのしか思いあたらないんですが・・・。矢萩さんがこの仕事をしてきて、やりがいを感じるのはどういう時ですか?嬉しかった事とか辛かった事、苦労した事などもあれば、教えて下さい。今の仕事に就くために、どんな努力をなさいましたか?そして、どんな資格や技術を身につけたんですか?学生の頃からこういう仕事につきたいと考えてらっしゃったのですよね。ミュージシャンという仕事に就く前に持っていたイメージと、現実にその仕事に就いてみて、どのような違いを感じられましたか?最近、フリーターも人が増えてきていますよね。そのような働き方をどう思われますか?定職とアルバイトの違いは何なのでしょうか?矢萩さんの学生時代のせいかつや考えと、社会に出てからの考えとでは、どのような面に最もおおきな変化がありましたか?矢萩さんは学生の間しとけばよかった、と思うことはありますか?あったら教えてくれますか?あと、これから社会の出ようとする人にアドバイスするとすれば、どんなことですか?

 最後に、これは絶対答えて戴きたいのですが、プロのミュージシャンになるためには、どんなことをしていけばいいですか?私は今バンドを組んでいて、将来は音楽で生活をしていきたいんですが、やっぱり難しいことなんですか?私はやる気も根性もあります。でも、それなりに才能がないとダメなんでしょうか。急に、こんないっぱい質問してすみません。でも、どうしても知りたい事だったんで・・・では、できれば、お返事ください。失礼しました。


<A> 矢萩秀明

 おやおや、ずいぶんたくさんの質問ですね。でもこうした疑問を持つのはとても良いことですね。私の師匠の師匠の牧口先生は、「認識なくして評価せず」とおっしゃっていました。ミュージシャンについて正しい認識を持って良くお考えになり進路を決めてください。私にも、将来プロ・ギタリストを目指す高校2年生の息子がいますから、あなたのお父さんになったつもりでお答えしますね。

質問1.矢萩さんは、ミュージシャンという仕事に就いて何年くらい経つんですか?

お答え: 私は、19才の時にプロ活動を始めました。現在47才ですので28年間プロとして活動していることになります。仕事に就いたいきさつについては、キャリナビの取材記事か私のHPのコラムをご覧ください。

質問2.私も将来ミュージシャンになりたいと思ってるんです!それで、ミュージシャンって具体的にはどんな事をしてるんですか?私の中では、テレビ出たり、ライブやったり、曲つくったりっていうのしか思いあたらないんですが・・・。

お答え: ミュージシャンの仕事の形態は、正業としては次の5種類があります。

1.箱伴(ハコバン)

2.バック・バンド

3.スタジオ・ミュージシャン

4.アーティスト活動

5.作曲家&アレンジャー

 「1.箱伴(ハコバン)」とは、クラブ、キャバレー、ライブパブ、ホテル、レストラン、ディスコ、ダンスホールなどの決まったお店に決まったメンバーが長期契約で出演、演奏する仕事です。私が、活動を始めた時期にはこうした仕事がたくさんあったのですが、今は激減してしまいました。だいたい10万〜20万円くらいの月給制が多い。

 「2.バック・バンド」とは、歌手やタレントのコンサートやイベント、ライブ、ディナーショーなどの伴奏をする仕事です。この仕事も、不況の影響でコンサートを打てない歌手が増え、ずいぶん少なくなってしまいました。専属契約を結んだ場合は月給制、専属でない場合は一本(一日)いくらと言う日当月給になります。ピンからキリまであるのですが、今の相場は一本(一日)最低4万円くらいだと思います。私はコンサートの場合、1本5〜8万円のギャラをいただいていますが、私の友人のある人は1本14万円もらっていました。もっと上もいます。これらはミュージシャンの格にもよりますが、それよりは歌手がどれだけ売れているかによって違います。1本14万円もらっていた友人がやっていた歌手は一年に二ヵ月くらいのツアーを3シーズンやっていましたから、14万円×60本×3=?年収はいくらになるでしょう?でもこうした仕事はそうはありません。仕事を求めるミュージシャンの数に対して仕事が少なすぎて激しい競争がおきて、ミュージシャンを廃業する人が後を絶ちません。

 「3.スタジオ・ミュージシャン」とは、録音スタジオでの録音の仕事をする人です。時間給で1時間1万円で1セッションが2時間くらいが相場です。ミュージシャンの格が上がれば時給も上がります。大抵は「インペグ」と呼ばれるミュージシャン斡旋業者が仕切っていますから、インペグのリストに載る事が必要です。これ以外だと、アレンジャーや作曲者、アーティスト、プロデューサーなどとのコネで指名された場合があります。この仕事も1日に何本の仕事を依頼されるかによって収入は大きく変動します。現在は、スタジオの仕事も激減して、スタジオの仕事だけで生活していた人も生活が苦しくなりバックバンドの仕事に降りてきたり、副業を持つ人も増えています。駆け出しのミュージシャンがいきなりスタジオ・ミュージシャンになることはまず無理でしょう。

 「4.アーティスト活動」とは、自分達でバンドを結成し、自作自演する活動をすることです。大抵はどこかのプロダクションに所属して活動します。契約によって月給をもらい、それ以外に作詩や作曲している場合は印税が入ります。この仕事は、一応自分達のやりたいことをやっているのですから一番いいですね。でも、バンドが売れれば収入も上がりますが、売れなかったら安い月給だけです。それに、作詩作曲していない演奏だけのメンバーには印税は入りません。それから忘れてはいけないことは、そのバンドがいつまでも続くわけではないと言うことです。1年ももたないで解散するバンドは山ほどあります。その時、ミュージシャンとして実力の無い人は寂しく消えていくしかありません。私は28年間、そうした人を沢山見てきました。それから、自分達のバンドでデヴューすれば思い通りのことができると思うのは間違いです。音楽業界はそんなに甘くありません。私のHPのコラムにも書きましたが、ミュージシャンの世界と音楽業界とは本来別のものです。ミュージシャンは音楽そのものを追及していきますが、音楽業界の追及していくものはお金です。このアーティストは売れるとなれば、音楽業界の人が群がって来ます。音楽業界にとってアーティストは人ではなく商品なのです。もちろん音楽業界の人がすべてそうだとは言いませんが、本質はそうだと言うことです。悪く言えば、アーティストやミュージシャンを食い物にするのが音楽業界です。好意的に言えば、ギブ&テイクでお互いにBigになろうと言うことです。音楽業界がどうやってアーティストをあやつるかについては、こうした場では書けません。しかし、アメリカのロック・スター達がたどった悲劇の歴史を学べば、その一端はうかがい知ることができます。

 「5.作曲家&アレンジャー」の仕事は、本当にピンからキリまであって仕事量によって収入はまちまちです。録音機材などを買い揃えて制作している人が主流です。プロモーションするのが大変なので作家事務所に所属している人が多いです。

 昔はこれらの5つの仕事は分離していましたが、いまは一人のミュージシャンがこれらの仕事のいくつかを兼ねてやっていることが多くなっています。

 次に、副業としては、

1.音楽学校や音楽教室の講師

2.コンピューターの打ち込み(カラオケ、着メロ)

3.音楽制作会社の経営

4.プロデュース業

5.音楽ライター(本の執筆など)

6.その他の特技を活かす

7.音楽以外のアルバイトなどがあります。

 私のHPのコラムにも書いたように、今の日本には演奏だけで生活ができる人はほとんどいません。皆、何かしらの副業を持っているのが現状です。

質問3.矢萩さんがこの仕事をしてきて、やりがいを感じるのはどういう時ですか?嬉しかった事とか辛かった事、苦労した事などもあれば、教えて下さい。

お答え: この質問の答えはキャリナビの記事に詳しくでていますのでそちらをご覧ください。音楽を創造し、表現し、人に伝え、音楽を聴いた人が歓喜する姿を見るのは何よりの喜びです。自分がこの世に生まれてきた使命を知り、それを果たしていくのは何よりの喜びです。希望を失くした人に光を、悲しみに沈む人に安らぎを、苦悩する人に喜びを与えることは何よりの喜びです。

 過去に仕事が無い時に辛かったことがありますが、今は平気です。また、自分がやりたい事と仕事の内容とのギャップに悩んだ事もありました。また、音楽の仕事と言っても、やはり人と人との関わりの中で仕事をするわけですから、人間関係が最も大きな問題かも知れません。

質問4.今の仕事に就くために、どんな努力をなさいましたか?そして、どんな資格や技術を身につけたんですか?

お答え: 私のHPのコラムの「昔話」に詳しく書いてあるのでそちらを読んでください。音楽家として生きていくために必要な事を身につけ、必要な人と会い、必要な事をすることです。

必要な事とは、

1.演奏技術

2.知識(音楽理論など)

3.能力(良い耳を持つこと)

必要な人と会うとは、

1.先輩ミュージシャン

2.アレンジャー

3.プロデューサー

4.インペグ

5.レコード会社の人

6.プロダクションの人

など仕事を紹介できる人に会うこと。

必要な事をするとは、

1.ライブ活動(作品の発表)

2.デモの制作と売り込み(プロモーション活動)

3.ミュージシャンや音楽業界の人とのおつきあい

 資格については、特に必要な資格などありません。実力第一です。楽器メーカーや学校の認定する演奏グレードはその会社内では有効ですが、ミュージシャンの仕事には何の役にもたちません。また、専門学校を卒業すると卒業証書と「専門士」の称号(資格?)がもらえますが、やはり何の役にもたちません。ただ、音楽関係に就職する時に役にたつかも知れません。コラムにも書いたのですが、ミュージシャンの仕事には何の資格もいりません。その人が自分はミュージシャンだと主張すればミュージシャンなのです。ただ、それと職業的に成功するかというのは別の問題です。職業としては、日雇の土方仕事とあまり違いません。何の保証も無く、身体を壊したら終わりです。労働条件は悪く、社会的な認知度も低い職業です。

質問5.学生の頃からこういう仕事につきたいと考えてらっしゃったのですよね。ミュージシャンという仕事に就く前に持っていたイメージと、現実にその仕事に就いてみて、どのような違いを感じられましたか?

お答え: 若い時(高校生の時)は、ただがむしゃらに音楽をやっていました。情報の少ない時代でもあり、田舎に住んでいたせいもあり、音楽家の世界の事も音楽業界の事も何も知らずにこの世界に飛び込みました。ですから、ただがむしゃらに目の前の仕事をこなし前進してきました。音楽の世界の事だけでなく、一般社会の事もろくに知りませんでした。世間知らずの音楽バカだったのです。ですからイメージのギャップは有りませんでした。そのままこういうものだと受け入れてきたのです。しかし、自分が人間として成長するにつれ、先ほどお話ししたように、音楽家の世界と音楽業界とは違うと言うことが分かってきました。それは音楽を通して真理を目指す人と音楽を通して利潤を追及する人との違いに外なりません。

質問6.最近、フリーターも人が増えてきていますよね。そのような働き方をどう思われますか?定職とアルバイトの違いは何なのでしょうか?

お答え: 私の教室の生徒にもアルバイトをしながら音楽を学んでいる若者がたくさんいます。その人の生活スタイルに合わせて就職するのもフリーターの道を選ぶのもどちらでも良いと思います。問題は労働スタイルにあるのではなく、何のために生きるのかと言うことです。私は、アルバイトをしながら音楽を学んでいる生徒に「私はフリーターです。」とは言うなと言っています。今、音楽で生活ができているかどうかはどうであれ、堂々と「私はミュージシャンです。」と言いなさいと教えています。

質問7.矢萩さんの学生時代の生活や考えと、社会に出てからの考えとでは、どのような面に最もおおきな変化がありましたか?

お答え: 若い頃は、憧れの人と同化したいと言う欲を原動力として自己満足のためにやっていました。今は、使命を果たしたいと言う欲求を原動力として活動しています。

質問8.矢萩さんは学生の間しとけばよかった、と思うことはありますか?あったら教えてくれますか?

お答え: ピアノを習っておけば良かったと思っています。

質問9.あと、これから社会の出ようとする人にアドバイスするとすれば、どんなことですか?

お答え: 目標を持って生きましょう!目標を持って戦う人と目標もなくなんとなく生きている人とでは勝負にならないでしょう。そして、社会に貢献できる人間になりましょう。他人が不幸である限り自分の真の幸福も有り得ないのですから。

質問10.最後に、これは絶対答えて戴きたいのですが、プロのミュージシャンになるためには、どんなことをしていけばいいですか?

お答え: 私のHPのコラムの「ミュージシャンの心得」に詳しく書いてあるのでそちらを読んでください。ミュージシャンとしての実力をつけることが何より必要です。それから、あなたを支持してくれる人を増やすこと。私が、永い間プロでいられたのも私を支持し使ってくれる人がいたからです。そして、仕事の輪の中に入ること。きっかけや形態はどうであれ、まずは輪の中に入ることが先決です。輪の外にいるのではいつまで待っていても仕事は来ないでしょう。ただ、プロとアマチュアの定義の上で一番大きな違いである「演奏だけで稼ぐ」ことが難しくなった現代において、もうプロとアマチュアの違いを言うのはナンセンスなのではないでしょうか?重要なのはプロとアマチュアの違いではないように思います。ベートーベンやモーツアルトのような世界最高レベルの音楽家であっても、経済を優先させた場合、職業としては儲からないのです。歴史が証明しています。こうなると音楽家を職業としてとらえるのは間違いなのではないでしょうか?私は、音楽家は職業の一種を指すのではなく、人生の生き方を言うのだと考えています。音楽家とは、音楽と言う芸術を通して真理に近づいていく生き方を選んだ人のことです。そのために自己を磨いていくのです。その結果として他の人より技術や知識が優れているのは当然のことです。しかし、それ以上に大切なのはその精神にあります。ある若者が、私に老後のことを質問しました。「だんだん年を取って仕事が無くなっていきますが、老後のことはどうするのですか?」私は彼にこう答えました。「老後の事は、一人の人間としてはもちろん考えています。しかし、音楽家としてはまったく考えていません。私もやがて老いていくだろうが、死を迎えるその瞬間まで音楽家をやめるつもりはありません。」いろいろ大変なこともあり、お金も無いけれど、私は音楽家の人生を選んで良かったと思っています。

質問11.私は今バンドを組んでいて、将来は音楽で生活をしていきたいんですが、やっぱり難しいことなんですか?

お答え: 難しいことです。私のHPのコラムの「プロってな〜に」に詳しく書いてあるのでそちらを読んでください。今、社会は不況に苦しんでいます。ですから、社会的にあまり良い条件はありません。でも、あなたには若さがあり、若さゆえの限りない可能性があるではありませんか。世界は新しい希望の歌を待っています。どうか、あなたは困難と戦って勝利し、希望の旋律(メロディー)を歓喜の律動(リズム)にのせて世界に拡げる音楽家になってください。あなたの成功を祈っています。

質問12.私はやる気も根性もあります。でも、それなりに才能がないとダメなんでしょうか。

お答え: 才能が無いととても苦労するでしょう。しかし、ミュージシャンになりたいのならなればいいのではないですか?あなたがミュージシャンになれるかどうか誰かに決めてもらって、その通りにするつもりですか?あなたの大切な人生です。悪い事でない限り、やりたいことをやればいいと思います。ただ、何があっても自分の責任です。後で決して愚痴を言わないでくださいね。私には、大した音楽的な才能はありません。耳もリズムも悪く、才能に恵まれた人には逆立ちしてもかないません。しかし、そうだからと言って私が音楽家になってはいけないわけではありません。才能があるか無いか、そんな事はどうでもいいのではありませんか?私は、「先生、僕はプロになれるでしょうか?」と聞いてくる生徒には、「プロになると決めたものがプロになるのであって、そんなことを言っているようではプロにはなれないだろう。」と言っています。才能が無い分、人の何倍も努力してカバーするしかないのではありませんか?

 以上、参考になる話が書いてあるので私のHPのコラムもご覧ください。


矢萩秀明


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