第66話 – 指の分離について

左手(フィンガリングをする方の手)の4指の分離独立についてお話しします。指練習の参考にしてください。
文中での指の関節についての呼び方は、便宜上、指先から「第1関節」、「第2関節」、「第3関節」とします。

1.自然な脱力状態

腕を脱力して、肩からだらりとぶら下げたような状態にします。
この状態で、手を見てみると、手の甲も、指もすべてが緩やかに曲がっていて、全体が丸まっています。これが、伸筋も屈筋も働いていない状態、つまり、自然に脱力した状態です。
指を伸ばして揃える動作では、腕や手の中の伸筋群が働いてます。
このまま指を伸ばしていると疲れてしまいますが、力を抜けば指は自然に丸まります。

左手のすべての指を伸ばした状態から、指を一本ずつ曲げて各指の状態を確認してみましょう。

2.人差し指

人差し指だけを曲げても、他の指はほとんど影響を受けません。
人差し指の第3関節を、かなり大きく曲げると、引っ張られるように、中指も少し動いてしまいますが、このことを考慮したとしても人差し指は独立を保っていると言ってよいでしょう。

3.中指

中指だけを曲げようとすると、引っ張られるように、薬指も一緒に少し曲がってしまいます。

4.薬指

薬指も比較的に独立していますが、第1関節をかなり大きく曲げると、中指と小指が引っ張られて、一緒に少し動きます。

5.小指

小指だけを曲げようとすると、引っ張られて、薬指も一緒に動いてしまいます。

6.脱力した状態での運指

手を自然に脱力して手を丸めた状態で、1本の弦の上で構えます。その体勢から、指を一本づつ弦に降ろしてみます。
よく観察すると、第1関節と第2関節は、既に曲がっていて、第3関節を動かして指を上げ下げしていることが判ります。
この状態では、どの指も独立を保っていて、実用上、問題はありません。

7.力を入れた状態での運指

次に、手を脱力した状態で、4本の指で、ある1本の弦を押さえ、指先に力を加えて下さい。
この状態から、指を一本ずつ高く上げてみましょう。
人差し指と中指、そして小指は簡単に高く上げることが出来ますが、薬指だけは高く上げることが出来ないことが判ります。少しだけ上げるにしても、他の指よりも力が要ります。

8.問題は薬指

薬指は、中指と小指と腱を共有しているので、独立性乏しい指なのです。
薬指だけを上げようとする動作は、指を曲げる屈筋を作用させたままで、薬指だけ伸ばす伸筋を作用させようとするものです。
このような動作を「同時収縮」と呼びます。腕の中の大きな筋肉を使うので、大変疲れます。

9.同時収縮は不自然な体の使い方

同時収縮と言う不自然な体の使い方は、筋肉を酷使する為、故障につながりかねません。
このような動きは、普通に生活する場合にはない動作です。
ですから、四指の分離独立は、訓練によってある程度可能になりますが、腱の構造上、完全に分離独立させることはできません。無理な練習は故障の原因になりますから十分に注意してください。

10.指を速く動かすには

指を速く動かすには、手の力を抜いて、指を上下運動させます。
この動作は、主に、第3関節を使いますが、第3関節をメインに使って指を上げ下げすると指が大きく上下します。指の動きを小さくするには第2関節をメインに使うことです。

弦を押さえる時は、指が指先のある方向へ動きます。
指の筋が働いて、離せば指は戻ります。
力が入っていなければ指は敏捷に動きます。弾きにくいと感じる時、多くの場合は、指が固くなっています。
そんな時には、頑張って動かそうとしてますます力を入れてしまいがちですがそれは逆効果です。
なるべく力を入れずに押弦するためには、最低限どれだけの力があれば押弦できるのかを知ることです。
意外と少ない力で押弦することができるはずです。
もし押弦するのにかなり力が必要なのであれば、弦のゲージが太すぎるのかも知れません。無理をせず自分の手の力に合ったゲージにすることを薦めます。

11.指の敏捷性を活かすには

指の敏捷性を活かすには、手指のやわらかさが大切です。手も固いよりは、柔らかい方が、中指や薬指を使う時に互いに引っ張られる力が弱くなります。
指の柔軟運動を含めたウォーミングアップをしておきましょう。力を入れると手首や肩も固まりやすいです。
また、演奏内容によっては指を離す動作を速くしようとするのがいい場合と指を降ろす動作を速くしようとするのがいい場合とがあります。

12.薬指への力の入れ方

薬指で弦を押すためには、薬指の指先の方向へ力が入りやすいように手を持っていってあげるようにします。
肘から持っていくようにして手首から支えてあげます。
つまり薬指に力を入れるのではなく、肘からの力を薬指の指先に伝えて押し付けるようにします。
この力の使い方は薬指に限ったことではありません。
指自体に強く力を入れると筋肉は硬くなり素早い動きができなくなります。前腕や各指の筋肉は指の姿勢のコントロールに使い、押弦するのは肘から持って来た力を指先に伝えるようにします。

13.大切な二つの固定

フィンガリングに使う指を安定して動かすには二つの固定が大切です。
一つは楽器の固定。とりわけネックの固定です。
これには右腕(ピッキングする側の腕)の肘でしっかり楽器を挟み込む必要があります。こうして肘に力を入れるとネックは前に出ようとします。
これを左手(フィンガリングする側の手)でしっかりグリップして少し手前に引くようにするとネックが前に出ようとする力と釣り合ってしっかりと固定されます。
もう一つは指が付いている土台の部分、つまり手の平を含む手の本体の固定です。これはグリップ、つまりネックの握り方が重要な鍵になります。
この二つがしっかり固定され安定していてこそ指の安定した動きが可能になるのです。

14.フィンガリングには重心がある

グリップによってネックと手自体を安定させようとする時、グリップの親指だけでは不可能です。親指と向かい合う指が最低でも1本なければ、弦とネックを挟み込むことはできないからです。どれかの指を動かそうとする時、残る指のどれかは重心を支えなければならないのです。指の動きに伴う重心移動をうまくアレンジしてやればフィンガリングは飛躍的に安定します。

15.腕と指の勘違い

指を動かすつもりで実は指はほとんど動かずに腕や手自体が動いていることがあります。これは勘違いや思い込みによるもので多くは自身は気づいていません。
手自体が動くのは腕が動いているからです。動きの速さだけを考えれば腕を動かして押弦するより指だけを動かした方が断然速いのです。

どの関節を使うのかやどの筋肉を使うのかなどは演奏に深く関わってきます。ガムシャラに練習する前にここに挙げた内容を確認してみてください。