第69話 – 指の基本的な使い方

1.指と腕を勘違い

ギターを弾く時に、左手の指や腕の使い方を勘違いしている人が実に多いのです。
例えば、指を動かすだけでよいのに、肘の位置を変えることや腕を動かすことで指先の位置を変えようとする人が多いのです。勿論、本人は気付いていません。

2.指の動きを観察しよう

そこでまず、指を動かす練習をしてみましょう。
説明の都合上、指先から順に第1関節、第2関節とし、指の付け根の関節を第3関節とします。

(指の関節)

3.第3関節を観察

左手全ての指をまっすぐに伸ばした状態から第3関節だけを90度曲げます。

(指をまっすぐ)

指と指の間を閉じて注意深くゆっくりとやってみましょう。これは簡単にできることでしょう。

(第3関節曲げ)

この関節の使い方をするのはギターでバレーをする時です。

(バレー)

4.第2関節と第1関節の観察

次に、左手全ての指をまっすぐに伸ばした状態から第2関節だけを90度曲げてみましょう。
指と指の間を閉じてゆっくりとやってみてください。
これは難しいはずです。

第2関節を曲げようとすると第1関節も少し曲がってしまいます。
しかし、これは第2関節を曲げてから、第3関節だけををまっすぐに戻せば実現できるでしょう。
しかし、第1関節も少し曲がってしまう事に気付くと思います。

(第2関節曲げ)

これは、何と、末節骨(第1関節から先の指先の小骨)に接続している腱は、中節骨(第2関節と第1関の間の小骨)に接続している腱に空いた穴を貫くように通っている(!)ことが原因です。

(指の腱の図)

そのため、第1関節を曲げると、中節骨に接続している腱も一緒に引っ張られて第2関節も曲がってしまいます。
つまり、第2関節を中心に曲げようとすると第1関節と第3関節が少し曲がってしまうおです。
これが普通の関節の連携の状態です。

5.クラシック・グリップのメリットとデメリット

テニスボールを掴むような手の形を作ってみましょう。

(ボールをつかむ手の形)

横から見ると親指も併せて全体がアルファベットの「C」の形になるようにします。

そのままの形でギターのネックを挟んでみましょう。

(クラシック・グリップ)

親指はネックの真裏のR(アール)の頂点に末節骨付近の肉厚の部分を当てるようにします。
この形がギターで単音を弾く場合の指の使い方であり、「クラシック・グリップ」と呼ばれるグリップです。

第2関節を中心に曲げることで、指先を適度に立てることができます。
第3関節は僅かに曲げるだけにすることで指間を開くことが可能になります。
この状態でなら、わずかですが第1関節を曲げたり伸ばしたりできます。
このように指の間を開いたり、指を立てて力の集中効率をよくしたり、バレーができるなど多くのメリットがあります。しかし、親指だけでグリップしているのですべての力が親指にかかり、親指の関節に大きな負担を掛けます。これにより腱鞘炎になることがあるので注意してください。

6.ロック・グリップのメリットとデメリット

ネックから親指を飛び出させて鷲掴みにしたのが「ロック・グリップ」です。

(ロック・グリップ)

ネックの6弦側のへりに親指を引っ掛けてテコの原理でチョーキングを楽にすることが出来ます。
しかし、このグリップだと、クラシック・グリップに比べて、第3関節をより大きく曲げることになり、指間はまったく開かなくなります。そのため、狭い範囲しか指が届きません。
第3関節を曲げた状態から指間を開こうとすると大きな力が必要になります。

(握った手)

指間を開いた状態から第3関節を曲げた方が、やや指間が広くなるようですが、やはり大きな力を必要とし、腱に無理な力を掛けることになるのでやめた方がよいでしょう。

ロック・グリップは欠点だらけのような印象を受けますが、手の平全体でグリップするので手に掛かる力が分散して手にあまり負担を掛けません。つまり手に優しいグリップなのです。

7.第1関節だけを曲げてはダメ!

因みに、左手全ての指をまっすぐに伸ばした状態から第1関節だけを90度曲げようとすると、第2関節も曲がってしまいます。
第1関節だけを曲げることは、希に出来る人もいますが、出来ないのが普通です。
無理にこれを行うと前述した理由により中節骨に接続する腱を痛めてしまいかねないので注意してください。

8.指がばたつく原因

こうして関節の使い方が解った上で、左手のフィンガリングを見直してみましょう。

単音を弾く時に第3関節を多く曲げて、第2関節を曲げない人は指が寝ている状態で弦を押さえることになります。

(指が寝ている状態)

指は伸ばした状態になり、押さえようとする弦以外の弦にも指が触れて、力が分散するので、結果として指に力を入れている割に押さえが弱くなり、音が悪くなります。
この状態の人は、指を上げ下げする時も、バタバタと指が大きく動いてしまいます。
第3関節を使って指を上げ下げしているからです。
このような状態に陥っている人が実に多いのです。

9.第2関節が鍵!

これを改善する為には、第2関節の曲げを中心に使い、補助的に第1関節の曲げを併用することです。

(指が立っている状態)

 

指が立っている状態)

すると、指先が適度に立った状態で弦を押さえることが出来て、輪郭のはっきりした芯のある良い音になります。

ある音を出したり、ミュートしたりする場合は、第3関節と第2関節の曲げ具合はそのままで、第1関節を使って指先だけでコントロールするようにします。
これをマスターすると劇的にフィンガリングの無駄が無くなります。

10.弦移動の方法・・これはダメ!

弦移動の方法には大きく分けて二つの方法があります。

一つは手首の位置を変えることで
弦移動する方法です。

例えば、自分から見て手首がネックの裏側にあり、ネックから遠く位置している場合には、弦を押さえる指は1弦側は押さえられるのですが、6弦側には指が届きにくくなります。

(手首がネックから遠い位置)

手首をネックの下に位置するようにすると、6弦側にも楽に指が届きます。

(ネックの下に手首を位置させる)

これを利用して、まずクラシック・グリップで、ネックの下に手首を位置させて、6弦を押さえます。
この状態から、弦を移動する度に手首を手前に引いて、1弦まで移動します。そして、逆に1弦から6弦に移動する時には、手首を段々ネックの下方に移動せます。

この方法の、メリットの一つは、指を曲げ伸ばししないので、指が疲れないことです。。
もう一つのメリットは、6弦から1弦にへと大きく弦移動したい時のようにに、弦移動の距離が大きい場合に素早く移動が可能なことです。

しかし、反面、腕全体が大きく動くことになるので、速い演奏が続くと、腕全体の運動量が大きくなり、体力を消耗します。それに動きが大きい分、弦移動に時間がかかり、演奏速度の限界が早く来ます。

11.指だけを動かす

もう一つの弦移動の方法は、手首の位置は変えずに、指の曲げの角度を変えることにより弦移動する方法です。

まず、クラシック・グリップで6弦を押さえます。この時、ネックに対して指はほぼ直角に入っています。

(ネックに対して指はほぼ直角)

5弦に移動する時には、手首の位置を変えずに、固定したままで、主に第2関節を曲げることで、指先の位置を変えて、弦移動します。
皮膚の痒いところを指先で小さく掻くような動作です。
主に、第2関節が大きく曲げますが、同時に第1関節を使って指先が動くようにします。それに伴って第3関節もわずかに動きます。
こうして、関節の曲げにより弦を移動して行きますが、このまま1弦まで移動すると、第2関節を完全に曲げて指を折り畳んだような状態になり、正しく弦を押さえられなくなってしまいます。
そこで、6弦から4弦までは、関節の曲げにより移動し、4弦から3弦に移動する時に、手首の位置をやや左に傾けます。左手の親指の位置はそのままでこの動作をするとほんの少しだけ手首の位置を手前に引くことになります。
そして3弦から1弦までは、この傾きを大きくして行きます。すると1弦を押さえる時にはネックニ対して指が左下から斜めに入ることになります。

(1弦を押さえる指の形)

逆に、1弦から6弦に移動する場合は、1弦から3弦までは、左手の傾きを少しずつ直して行きます。これで左手首の位置は元の位置に戻ります。4弦に移動する時に、ネックに対して左手の指が直角に入るようにします。
そして、4弦から6弦へは、また関節を伸ばすことで移動して行きます。

指を移動させる場合、第3関節ではなく、第2関節を中心に使うことで、かなり無駄な動きを無くし、小さな動きで弦に移動することが出来るのが最大のメリットです。

弦移動を手首の位置移動にのみ頼っている人は、弦移動する度に左腕全体が大きく動くことになり、速いテンポでの演奏を妨げる原因になっています。
第2関節の曲げ伸ばしによる弦移動を中心にして、手首の位置移動を最小限に抑えると良いでしょう。
ただし、ある種の状況では、指を動かすより腕や手を動かした方が良い場合もありますから演奏内容によってどちらが良いのか検討して下さい。

12.まとめ

指を動かす時に、いったいどの関節を使おうとしているのかを確認しながらゆっくりと練習してください。。
また、指を動かすつもりで腕を動かしている人が多いのです。自分が身体のどの部位を使っているかを冷静に観察しましょう。
また、中指と薬指は腱を共有しているので完全に分離させるのは無理です。同様に、腱の構造から第1関節は第2関節を曲げた時だけ動かせます。こうした身体の仕組みを知っていれば無理な練習をしなくて済みます。

指の柔軟な動きは手が柔らかくないといけません。あまり力仕事をすると手の皮が硬く厚くなります。すると指は手の平に引っ張られて柔軟に動くことができなくなります。この辺りのこともご注意ください。