第72話 – 音魂

ギター・ビルダーである表克美氏の文章を読み考えました。
表克美氏は、フェルナンデスやESPを経て渡米し、ギター・ビルダーとして活躍。現在は、MOONやBLUES GUITARと言うブランド名でギターを製作しています。
表氏は、ギターを大量生産する必要はないのではないかと疑問を投げかけています。

木材もインレイに使われる貝殻や、べっ甲や牛骨、果ては金属や樹脂に至るまですべて地球から頂いたものですね。
小欲知足という言葉がありますが、私たち日本人は自然と共に生き、物を大切にして暮らして来ました。
日本古来の多神教の宗教観から、すべての物に命が在り、神が宿ると考えていたからでしょう。
そこには自然に対する畏敬の念や感謝があったと思います。

翻って、現代社会では、無神論者が溢れ、欧米式の資本主義の価値観が流布しています。
そのような風潮の中では、ギターも単なる物質でしかないのでしょう。
人間の欲望が大きく膨らんでいる時代だと思います。
際限なく膨らむ欲望は、今や地球を飲み込もうとしています。
それにも飽き足らず、やがては、宇宙にその触手を伸ばそうとしています。
そんなに富が必要でしょうか?

私はギターを弾きますが、そこから溢れ出す音楽は、私の魂と、ギターに元々内在するサウンドの可能性とが融合した結果だと思っています。
ギターの中には元々素晴らしいサウンドの可能性が眠っています。
ギターを弾く者の力量や人間性に応じて、実際の音楽として表れて来ます。
その可能性をどこまで引き出せるかは、弾く者の精進次第です。
言い換えれば、ギターのお陰で、私は精進し、人間性を深めて来れたのだと思います。しかし、私などはまだまだ精進が足りていないと思います。

私の精進の足りなさはさておき、私は私のギターに深く感謝しています。
皆さんもご自分の愛器を大切にしてとことん可愛がってあげてくださいね。