第84話 – 「セミ・アウトの薦め」


1.Dm9-G7の2コードでのソロ

次のようなDm9-G7の2コードの繰り返しに対してどんなソロができるでしょうか?

Smooth Funky Groove Dm7-G7 Long Backing Track By Peter Higginsを引用

次の動画は、Dm9-G7の2コードの繰り返しに対して私が行ったファンキーなスタイルのソロです。
このテンポだとDm7に対してDドリアン、G7に対してGミクソリディアンと考えるより、全体でCメジャー一発の方が合うようですね。

2.セミ・アウトを含んだソロ

Dm9-G7の2コードを繰り返すバッキングにかぶせてソロを取る場合に、私はこう考えます。
基本的にはDドリアン・モードと考えればよいのですが、セミ・アウトを交えて演奏することを前提に考えます。

アウトと言うのは、調性、または主となるスケール以外の音を使って部分的にソロを行い、その後に元の調性またはスケールに戻ることで大きな緊張感を得ようとする手法のことです。

調性に合っている音はインサイドであり、調性外の音はアウトサイドであると考えます。

セミ・アウトとは、本格的なアウトと比較すると、ある程度関連のあるスケール外の音ぉ使う方法です。

3.ソロに用いるアイテムの持つ調性感について

ソロの解説の前に、スケールなどのソロに用いるアイテムの持つ調性感について、私の考えを述べておきましょう。

音楽の中には楽音以外にもノイズやサウンド・エフェクトなどもたくさん使われています。
例えば、ベンチャーズの代名詞的なテケテケ・グリッサンドやロック・ギターにおけるアームダウンのサウンド・エフェクトなどには、はっきりした調性感はありません。
逆に言うと、こうしたサウンドには調性感が無いが故にどんなKeyでも使えるのだと思うのです。

もし仮に、こうしたサウンドにはっきりとした特定の調性が感じられるとしたら、同じ調性の曲でしか使えないはずです。

アウトをしようとする場合に、アウトに使用するアイテムの調性感が強いほど調性が合わなければ強烈にアウトするわけですが、セミアウトをお洒落に使おうとすると、調性感の強いアイテムは使いにくいのです。

そこで調性感の弱いアイテムを使ってセミ・アウトを試みます。
調性感の弱いアイテムとは、ディミニッシュ・スケールやホールトーン・スケールなどです。
また、調性感の強いスケールでも、完全4度音程を中心に動くようにすると調性感は弱まります。
また、半音進行、長2度進行、短3度進行、長3度進行などでモチーフを平行移動する場合にも調性感は弱まります。

4.コードの拘束力とテンポの関係性について

Dドリアンだけを使ってアドリブを展開するのももちろんよい方法だと思います。
ラリー・カールトンの「So What?」では、アウトらしいアウトはしていませんが、素晴らしい演奏であることには変わりありません。
しかし、パット・マルティーノの「Impressions」などにおける素晴らしいアウトを知ってしまうと、まったくアウトの無いInsideだけの演奏は少し物足りなく感じてしまいます。
かといって過激なアウトをやりたいわけではないのです。
お洒落にほどよい刺激が欲しいのです。
と言うわけで、セミアウトなのです。

前提としてもう一つ知っていた方が良いことがあります。
それはコードの拘束力とテンポの関係性についての知識です。
コードの拘束力は、テンポが遅いほど強くなり、各コードに合わない音を使うと「外した感」が強くなります。
逆に、テンポが速いほどコードの拘束力は弱まり、多少外れた音を使っても、フレーズの流れが自然であるなら、まったく問題にならなくなります。
Dm9-G7の2コードをの繰り返す場合、テンポが遅い場合にはDm7にもG7にもそれぞれに対応しなければなりません。
しかし、テンポが速い場合には2つのコードを一つの調性でアドリブすることが可能になります。
そこで、ここでは一発的な処理がやりやすいミディアム・テンポ以上で考えてみましょう。

5.セミアウトのアイテム#1 トニック・ディミニッシュ

まず、ディミニッシュのメロディック・アルペジオやディミニッシュ・スケールを使ってのセミアウトに限定してみましょう。
バッキングのコードはDm9-G13の2つのコードの繰り返しです。
テンポは♩=110位でファンキーに行きましょう!

この2つのコードが示す調性はCメジャーです。
そこでこの2コードをCまたはC6としてソロを展開します。
Cメジャー一発としてアドリブしますから、Cメジャー・ペンタトニックを中心にCトライアドのコード・トーンを着地点にしてアドリブします。

ここで、セミアウトのアイテムとして使うのは「トニック・ディミニッシュ」です。
トニック・ディミニッシュの基本的な使い方は、C➡︎Cdim7➡︎C
となります。
これは、調性の内側(Inside)か外側(Outside)
かで言うと、
Inside➡︎Outside➡︎Inside
となります。

具体的な手順としては次のようになります。

まず、Cメジャー・ペンタトニックでアドリブを始めます。
次に、Cdim7のスケールまたはメロディック・アルペジオのフレーズを短めに弾きます。
Cdim7のフレーズの終わりの音は、次にCのトライアドのコード・トーンまたは、Cメジャー・スケール(D Dorian)のスケール音につながるようにします。
Cディミニッシュ・スケールは、1オクターブだと、C、D、E♭、F、F#、G#、A、B、Cです。
これをCを1としてスケール・ディグリーで表記すると、1、2、♭3、4、#4、#5、6、7、8、となります。

(譜例-3)上図参照

この内、♭3、#4、#5の音は、単独で弾いてみると外れて聴こえます。
♭3は、ブルーノートと解釈します。3rdのE音へつなぐように解決すればおかしな音ではありません。

#4は#11のテンションと解釈します。これは、元のコードがDm7であると考えると、Dm7のMajor3rdの音になり、使用するのが憚られるのですが、G音に解決するように使うと、かえって面白い音です。

G#は、#5になりますが、A音に解決するように弾きます。

つまり、この3音は半音上昇することで、インサイドのスケール・ノートに対する導音になります。
一瞬外してから解決することで意味を持たせるのです。

これは、単独で音を使った場合のことですが、スケールを素早く一塊りで弾く場合もあります。
こういう弾き方の方が、外れた音の音価が小さくなり、より使いやすくなります。

6.セミアウトのアイテム#2 Cdim7の代理B7(♭9)

Cdim7に対して、半音下のB7(♭9)コードのアルペジオを使うことができます。
構成音がほとんど同じであるからです。
B7はドミナントなので、解決先はEM7かEm7です。元のKeyとの関連から考えるとCM7の代理であるEm7に解決すると考えます。
Em7はG7の代理にもなるので合いやすいと思います。
そして、B7に対してBコンディミを使います。
結局、Cdim7と同じですが、B7に対応すると考えると、B7(♭7)のアルペジオやコード崩しが使え、Cdim7と考えるのとは違うフレーズになります。

もちろん、B7に対応するスケールは他にもありますから、それを使うことも考えられます。

B7(♭9)➡︎Em7であれば、これをⅡ-ⅴ化すると、F#m7(♭5)-B7(♭9)➡︎Em7とできますし、Am7-B7(♭9)➡︎Em7ともできます。
更に、B7の裏コードであるF7のアルペジオを使って、F7-➡︎Em7とできます。
さらにこれをⅡ-ⅴ化してCm7-F7➡︎Em7ともできます。
Cm7をきついと感じたら、Cm6やCmM7にしてみてください。
元のスケールとの共通音を多くすると違和感が少なくなります。

7.セミアウトのアイテム#3 Dm7に対するセカンダリー・ドミナントA7(♭9)

Dm9-G13をDm7一発として処理する場合を考えてみよう。
この場合、Dm7に対するドミナントはA7です。
A7(♭9)➡︎Dm7

もちろんⅡ-ⅴ化することができます。
Em7➡︎A7(♭9)➡︎Dm7
Em7(♭5)➡︎A7(♭9)➡︎Dm7
A7に対しては、Aスパニッシュ8ノートやDハーモニック・マイナー・スケール、Aオルタードなどが使えますが、ここであえてAのコンディミ、つまりB♭ディミニッシュ・スケールを使ってみましょう。

B♭dim7のコード・トーンはB♭・C#・E・Gで、A7(♭9)とほぼ同じです。
B♭のディミニッシュ・スケールは、B♭・C・C#・E♭・E・F#・G・A・B♭となり、Dm7にF#の音を使うことになり、少々気がひけるのですが、F#に大きな音価を与えず、スケールを塊として使い、さらに必ずDmのコード・トーンに解決すればあまり気にならないと思うのですが如何でしょう?

もとより、セミアウトをしようとしているのですから、このくらいの外れた音で動じていてはなりません。

更にA7の裏コードのE♭7を使うこともできます。
これをⅡ-ⅴ化することも可能です。
E♭7➡︎Dm7
B♭m7➡︎E♭7➡︎Dm7

8.セミアウトのアイテム#4 G7に対するセカンダリードミナントD7(♭9)

Dm9-G13をG7一発として処理する場合を考えてみよう。
G7に対するドミナントは、D7(♭9)です。
D7(♭9)➡︎G7
これをⅡ-ⅴ化することも可能です。
Am7➡︎D7(♭9)➡︎G7

さらにD7の裏コードのA♭7を使ったり、これをⅡ-ⅴ化することも可能です。
︎A♭7➡︎G7
E♭m7➡︎A♭7➡︎G7

D7(♭9)には、Dオルタードなどが使えますが、もちろんここでもDのコンディミを使うことにします。
Dのコンディミは、E♭ディミニッシュ・スケールですが、これは最初に取り上げたトニック・ディミニッシュのCのディミニッシュ・スケールとまったく同じです。

想定しているトニックが違うので解決の仕方が違うだけです。

9.セミアウトのアイテム#5 G7をオルタードさせる

もし、G7をオルタードさせると考えると、GオルタードやGコンディミが使えます。
G7f(♭9)➡︎C
Gのコンディミは、A♭ディミニッシュ・スケールです。

10.セミアウトのアイテム#6 ホールトーン・スケールを使う

G7に対してGホールトーン・スケールを使います。
構成音はG・A・B・C#・E♭・F・Gです。C#音やE♭音がアウトした音です。
Dm7に対するセカンダリー・ドミナントのA7に対してAホールトーン・スケールを使うことも出来ます。
構成音はA・B・C#・E♭・F・G・Aです。
Gホールトーン・スケールと同じ音で構成されていますから同じスケールと言っていいでしょう。
ただ、G7と思うかA7と思うかで多少フレーズの中心音が変わります。

11.セミアウトのまとめ

これまでのところをまとめてみましょう。
以下は表側のコード・チェンジで、裏側は省略します。
(1)C➡︎Cdim7➡︎C
C dim.Scale(C dim.グループ)
(2)B7(♭9)➡︎Em7(CM7の代理)
C dim.Scale(C dim.グループ)
(3)E7(♭9)➡︎Am7(C6の代理)
F dim. scale(D dim.グループ)
(4)A7(♭9)➡︎Dm7
B♭ dim. scale(C# dim.グループ)
(5)D7(♭9)➡︎G7
E♭ dim. Scale(C dim.グループ)
(6)C7(♭9)➡︎FM7(Dm9の代理)
D♭ dim. scale(C# dim.グループ)
(7)G7(♭9)➡︎C
A♭ dim. Scale(D dim.グループ)

(8)G7➡︎C
Gホールトーン・スケール

(9)A7➡︎Dm7
Aホールトーン・スケール

12.あとがき

こうしてみてみると、C dim.グループ、C# dim.グループ、D dim.グループと、三つのディミニッシュ・グループが全て出てきます。
ということは、12音全部が含まれます。

であれば、Dドリアンの音に限らず、如何なる音からでもディミニッシュのスケールを弾き始めてよいということになります。
問題は解決の仕方だけです。

結論はかなりデタラメに近いものになってしまい恐縮です。
これは、セミアウトを前提にした話です。
調性音楽の場合には、調性を維持するためにもっと厳格にルールがあります。

アウトはどこに行ってもよいわけですから、結局のところ、よい悪いもセンス次第ということになりますね。
ただ、こうしたアプローチを試してみることによって、自分の殻を破るきっかけになると思います。

また、トニック・ディミニッシュは、トニックとサブドミナントとドミナントの機能の時に使用可能です。
ということは、音楽におけるコードのほとんどはこの三つの機能のいずれかに分類されるわけですから、コード進行に使われている多くのコードでトニック・ディミニッシュが使用可能であるということです。
これはモーダルなソロを考える上で大きなヒントになると思います。