第89話 – チック・コリア氏が残した16か条のアドバイス その1


ジャズ・ピアニストのチック・コリア氏が2021年2月9日に79歳でガンのために亡くなりました。

このニュースはミュージシャンの間でも大きな話題になりました。
それほどチック・コリア氏は現代のジャズにおいて偉大な人であったからです。
チック・コリア氏の訃報のすぐ後にGoogleニュスにチック・コリア氏の残した16か条のアドバイスの記事が出ていました。
1985年4月22日にボストンのバークリー音楽院でチック・コリア氏が行った特別講義の中で配られた文章だそうです。
読んでみるととても有益なアドバイスが綴られていました。これは素晴らしいと思ってFacebookでシェアしたのですが、そこに寄せられたある女性からのコメントの内容に私は更に考えさせれました。
私はGoogleニュースの記事に書かれていた日本語の訳文をそのままコピーしてシェアしたのですが、彼女の指摘によるとその文章の語り口はチック・コリア氏の語り口ではなく大きな違和感を感じると言うものでした。
彼女と彼女の娘さんはジャズを通してチック・コリア氏と実際にお会いしてお話しをされた経験があり、その時の印象はとても紳士的で優しい方だったそうです。
だから命令口調でそっけなくアドバイスを話すわけがないと彼女は主張するのです。
なるほど、そう言われて英語の原文を見てみると、英文ではどのような口調なのかは判りませんでした。

そこでチック・コリア氏の人柄を想像して訳し直してみました。
以下は私が訳した文章です。

グループ内でプレイするミュージシャンのための安っぽいけど良きアドヴァイス16か条
By チック・コリア

1. 聴こえて来たものだけをプレイしなさい。

2. もし、何も聴こえてこなければプレイしてはいけません。

3. 指や手足をぶらつかせないで。常に指や手足に意識や目的を持たせることです。

4. きりなく即興し続けてはいけません。常に意識や目的を持って何かをプレイしましょう。その即興を発展させるにせよ、しないにせよ、意識が無ければ演奏をやめて休符を取りましょう。

5. スペース(空間、間)を残しておきなさい。そのスペースを創り出して、意識や目的を持ってプレイしない場所を作るようにしなさい。

6. 自分の音を他者と融合させましょう。自身の音をよく聴いてバンドとその部屋の空間に沿うように調整するのです。

7. 同時に複数の楽器をプレイする時、例えばドラム・キットや複数のキーボードなど、それぞれの楽器のサウンドのバランスを必ず取るようにするのです。

8. 自身の音楽を決して無意識にに機械的に作ってはいけません。自身の癖のパターンから作ってはいけません。それぞれの音、フレーズ、部分を意図的に慎重に創り出しましょう。

9. 他の者が好きであろうものをプレイするのではなく、自身の好きなものをプレイすることに進もう。

10. 様々な要素のコントラスト、明暗や強弱とバランスをうまく取りましょう。その要素とは、高い音/低い音、テンポの速さ/ゆっくりさ、音の大きさ/ソフトさ、緊張/リラックス、密度の濃さ/薄さなどです。

11. 他のミュージシャンをよく見せるようにプレイしなさい。全体のサウンドが良いサウンドになるように心掛けましょう。

12. リラックスした身体でプレイしよう。緊張の元凶となるものはすべて常に解放しておきましょう。

13. 曲の導入部分、途中の発展部分にスペースを創り出しなさい。そして、意識的にフレーズを創り出して終了するのです。

14. 自分の楽器を決して叩いたりしてはいけません。優しく、優雅にプレイしましょう。

15. スペースを創り出しなさい。そしてそのスペースに何かを埋め込むのです。

16. 真似は最小限に。他のプレイヤーのフレーズを発展させ、コントラストをつけたフレーズをクリエイトしよう。

以下は原文の写真と原文のコピーです。

Cheap But Good Advice For Playing Music In A Group
Chick Corea’s

1. Play only what you hear.
2. If you don’t hear anything, don’t play anything.
3. Don’t let your fingers and limbs just wander—place them intentionally.
4. Don’t improvise on endlessly—play something with intention, develop it or not, but then end off, take a break.
5. Leave space—create space—intentionally create places where you don’t play.
6. Make your sound blend. Listen to your sound and adjust it to the rest of the band and the room.
7. If you play more than one instrument at a time—like a drum kit or multiple keyboards—make sure that they are balanced with one another.
8. Don’t make any of your music mechanically or just through patterns of habit. Create each sound, phrase, and piece with choice—deliberately.
9. Guide your choice of what to play by what you like-not by what someone else will think.
10. Use contrast and balance the elements : high/low, fast/slow, loud/soft, tense/relaxed, dense/sparse.
11. Play to make the other musicians sound good. Play things that will make the overall music sound good.
12. Play with a relaxed body. Always release whatever tension you create.
13. Create space—begin, develop, and end phrases with intention.
14. Never neat or pound your instrument—play it easily and gracefully.
15. Create space—then place something in it.
16. Use mimicry sparsely—mostly create phrases that contrast with and develop the phrases of the other players.

出展
https://note.com/ebs/n/n4de1e874bc59