第94話 – Scale Out #2


コンディミを使ったセミ・アウト

コラム第9話 「Scale Out」に引き続きアウトの方法を紹介します。
今回はコンビネーション・オブ・ディミニッシェド・スケールを使ったセミ・アウトです。
セミ・アウトと言うのはこの方法には理論的な裏付けがあり、考えようによってはインサイドのままであるとも言える音使いだからです。
変化が少ないのでインパクトは弱いのですが、その分使いやすいアウトのやり方だとも言えます。

ソロの手順と解説

全体としてはAm7の一発コードのバッキングに対してソロをかぶせるとします。モードとしてはAドリアン・モードです。

①Am7に対してAmペンタトニックを使ってアド・リブをします。

②アド・リブの流れが1弦のD音(11th)に向かったらアウトのチャンスです。この流れが大切です。いきなりアウトしてはいけません。

③1弦のD音(11th)に達したら、そこから頭の中をBのコンディミのスケールに切り替えます。

④そこからD音→C音→B音→A音と降りて行きますが、これらの音はAドリアンとBコンディミの共通音なのでここまではまだAドリアンだと思って聴衆は聴いています。

⑤フレーズが2弦のG#音→F#音→F音→E♭音→D音と来る辺りでアウトします。ここでビビってはいけません。
気持ちを強く持って最後まで弾き通してください。

⑥フレーズが4弦に来るとまたインサイドに戻ります。その後、4弦で一瞬G#音が出て来ますがすぐに主音であるA音に解決するのでまったく問題になりません。

⑦その後、フレーズの流れ通りB音に進みます。
ここから頭の中をインサイドであるEmペンタトニックに切り替えます。Emペンタトニックのフレーズで締めくくってこの一連の流れを終わります。

モードの音階和音の機能の見分け方

モードには機能和声の仕組みはありませんが、コードを使わないわけではありません。
モードに於いてはコードは、モードのサウンドの特徴を表す為に使われます。
これをモーダル・カラーと言います。
例えば、ドリアン・モードを表現する為には、トニックニなるコードと特性音を持ったコードを組み合わせて用います。
ドリアン・モードの特性音はスケールの第6音の長6度の音です。
Aドリアン・モードであれば、第6音はG#音です。

この特性音を三和音または四和音の中に含んでいるコードがモーダル・カラーを表す為のコードです。そして、それらのコードを除外して残ったコードがトニック・コードです。

Aドリアンのトニックになるコードは何といってもまずはAm7です。CM7とEm7はアド・リブ・ソロやコンピングの便宜上使われるトニックの代理コードです。

Aドリアンのダイアトニック・コードを、概ね隣り合った二つのコードを組み合わせる事でドリアンを表現します。

よく使われるのはAm7とBm7です。
この二つのコード・トーンを組み合わせて並べ直せばAドリアン・モードになります。

アド・リブの為のコード進行を作る

Aドリアンのトニック・コードはAm7でその代理コードがCM7とEm7です。

そのため、アド・リブ・ソロに於いてこれらのコードに対するアルペジオやペンタトニックを使うことが出来ます。
例えば、ペンタトニックを使うとすると、Am7にはAmペンタトニックを使い、Em7にはEmペンタトニックを使います。CM7にはGメジャー・ペンタトニックを使いますが、これをマイナー・ペンタトニックの直すとEmペンタトニックになります。と言うことはAmペンタトニックとEmペンタトニックが使えることになります。

するとAmペンタトニックを弾いている部分(小説)とEmペンタトニックを弾いている部分(小節)があることになります。
このEmペンタトニックを弾いている部分のコードは当然Em7を想定しています。

そこで、このEm7に対するセカンダリー・ドミナントを設定します。B7です。
するとアド・リブの便宜上のコード進行はAm7→B7→Em7となります。

これはバッキングのコード・サウンドの上にアド・リブ奏者が便宜上作ったコード進行ですから、バッキングの演奏者はこのコード進行を知りません。

これでセミ・アウトの準備が出来ました。

スケールを選択する

B7→Em7のB7に使えるスケールをリスト・アップして好きなスケールを選びます。
ここではB Combination Of Diminished Scaleを使います。「コンビネーション・オブ・ディミニッシュド・スケール」と読みますが長いので省略して「コンディミ」と言います。

このスケールについて詳しくは拙著「ギター音楽理論」ソロメイキング編のP299をご参照ください。
またその他のスケールについても「ギター音楽理論」ソロメイキング編をご参照ください。

アウトをする時の大切な手順

Aドリアン・」モードとBコンディミを比較して見ると多くの共通音があることに気づくでしょう。
これらの共通音(Pivot Note)は、アウトをする際の軸音になります。

コラム第9話「Scale Oit」でも述べていますが、あるモードから他のモードやスケールにアウトしようとする時に、アウトをより自然に効果的にする為に幾つかの大切な手順があります。
ここで再確認しておきましょう。

①まず充分にトニック(インサイド)のサウンドを繰り返す。この時、何度か軸音を使ったインサイドのフレーズを弾いて聴衆の耳に慣らした方が良い。(予告)

②アド・リブ・フレーズの流れに従って、その先にアウトの軸となるピヴォット・ノートを見つける。(流れをつくる)

③フレーズの流れに従って軸音に到達したらそこからアウトサイドのスケールに離脱する。
あくまでも前の流れを引き継いで弾くこと。
大きな一つの流れになるようにすること。
(軸音からの離脱)

④ある程度の時間アウトしたら、また軸音からインサイドに戻りきちんとフレーズを終わらせること。アウトする時の軸音とインサイドに戻る時の軸音の音名や高さは同じでなくても良い。(軸音から帰還)

⑤アウトを始めたら途中でけっしてビビらないこと。しっかりとして意思を持って最後まで落ち着いて成し遂げること。

セミ・アウト

Bコンディミを使ったこのフレーズの場合、軸音の1弦のD音に達してアウトしても、しばらくはAドリアンとの共通音が続くのでアウトしたようには聴こえません。
2弦~4弦でわずかにアウトするだけです。
Aドリアン ・モードに含まれない音は、F音とE♭音とG#音です。

F音はトニックのAm7にとっては♭13のアヴォイドの響きですから思い切りアウトしますが、Aナチュラル・マイナー・スケールの音なのでAm7とまったく無関係ではありません。
またE♭音はトニックのAm7にとっては♭5thのブルー・ノートですから使用してもまったく問題ありません。
G#音はトニックのA音に対する導音ですからこれも使用可能です。

このようにこのフレーズのスケール外音はそんなに思いがけない音ではないのです。
その事とB7→Em7と言うコードの流れが感じられるように弾けばおかしくは聴こえません。
人は動く物に興味を持つ性質があるので、アド・リブも流れがスムーズであれば人は流れを優先して聴くものなのです。

当コラムの他の記事にも関連した内容がありますのでこちらもご参照ください。
第 9話 – Scale Out
第24話 – リハーモナイズによるセミ・アウト手法について
第39話 – トニック・ディミニッシュの応用について
第84話 – セミ・アウトの薦め